先週末は、学会の仕事で福岡へ出張に行っていたのですが、久しぶりの福岡・・ということもあり、福岡の老舗ホテル・イル・パラッツォ – Hotel Il Palazzoに泊ってきました。1980年代後半に建設された、デザイナーズホテル(この呼び方、個人的には抵抗があるんですが・・)の先駆けであり、メインのデザインプロデューサーが内田繁(内田さんはパブリックデザインも担当)、客室デザインが三橋いく代、建築の基本デザインはアルド・ロッシ、メインタワーを取り囲む4つの店舗棟のインテリアデザインは、アルド・ロッシ、倉俣史朗、ガエターノ・ペッシェ、エットレ・ソットサスが共演すると言う、建築・空間デザインの教科書に登場する大御所の競演とも言える贅沢なホテルです。 残念ながら2009年に所有者が代わり、建築は丁寧に保存されているものの、インテリアに関しては別なデザイナーの手によって改装しており、一部の竣工当初の設えを残している個所のみ当時面影を見る事ができます。
以下 Wikipediaからの引用ですが・・
1989年に開業した日本におけるデザイナーズ・ホテルの先駆けで、バブル期に数多く企画された著名外国人建築家の設計による建築としても初期のものである。博多地区と天神地区の中間にあり、春吉に位置する。客室数は62室。「イル・パラッツォ」(Il Palazzo)はイタリア語で「宮殿」の意味である。全体の基本設計をイタリア人建築家のアルド・ロッシが行っている。外装にはイラン産の赤みのあるトラバーチンが用いられており、垂直に走る円柱状のトラバーチンと、水平に走る緑色銅板の庇がファサードに端正な表情を与えている。
建築に関しては、丁寧に手入れされており、赤いトラバーチンも経年変化によっていい状態になっています。スモールラグジュアリーというよりも、希代のクリエイター達が心血注いで創った感がにじみ出ていて、年数を経てもやはりいいなあと。個人的にイルパラッツオは二度目で、泊ったのは今回が最初でしたが、前回来た時もインテリアに関しては人が触れる部分だけに傷みが進行していた記憶があります。
2009年に改修した後の現状のインテリアは、部分的に竣工当初の仕上を残していたり、色を塗り替えていたりと新旧折衷なのですが、ビジネス側の要請からか無難にまとめられており、セグメント的にもビジネスよりも少しリッチな客層を狙っている感があります。元々春吉エリアはラブホテル街だったのですが、近年はビジネスホテルに業態転換しているホテルが多く、福岡の街が抱える課題(観光やビジネスショー・学会のニーズが高いのにビジネスライクなホテルが足りない)に直結しています。またホテルのセグメントも比較的VIPが泊まれるホテルが少ない事も、イルパラッツオがこのような改修を行った理由と繋がっている感じがしました。少し残念なのは、インテリアに関しても建築同様コンテクストの継承のようなデザインがなされていれば後世に残る遺産としてもっと愛されるんじゃないか?と。今のデザインが良い悪いではなく、文化として残して欲しかったです。内田繁さんはご健在ですからね。。