1:オムニチャネル(Omni Channel)とは? OMOとの違いについて
オムニチャネルとは、オンライン(EC=Eコマースやウェブ広告、SNS)とオフライン(雑誌広告や新聞広告から店舗や取り扱いディーラーや展示会)を融解し、あらゆるチャネルから購買行動が起こせるよう流通や決済システムを繋げる戦略もしくは仕組みづくりの事です。
シングルチャネル(店舗⇄ユーザー、EC⇄ユーザー)といった最もシンプルな導線での販売形態から、マルチチャネル(店舗&ディーラー&EC⇄ユーザー)ユーザー接点を量的に捉える販売形態に進化したチャネル戦略ですが、オムニチャネルは、スマートフォンの登場でよりリアルタイムで繊細な情報のやりとりが可能になってくると、あらゆるチャネルがシームレスにストレスなく繋がり「ユーザーは、どのチャネルで購入しても同じベネフィット=”購買体験” が得られる」事が可能になります。オムニチャネルは販売戦略だけでなくブランドロイヤリティを高める戦略としても再び注目を浴びています。
OMO(Online Merges with Offline=オンラインとオフラインの融合)の登場以降、影を潜めた感のあるオムニチャネルですが、ネットとリアルの垣根にとらわれず、あらゆるユーザー体験をデータ化することでユーザーエクスペリエンスの向上を目指す施策であるOMOの場合、特に中国では急速に浸透しているイメージがあります。これはキャッシュレス決済そのものが末端の小売業に至るまで浸透している(=そもそも自国貨幣をあまり信用していない。高額紙幣がなく偽札も横行している)事も大きく、専用アプリでの購買から決済〜流通までを一元化する流れが生まれてくるのは、むしろ必然だったとも言えます。
かたやオフラインとオンラインを区別するオムニチャネルは、既存のリソースを活用しやすく、リアルな体験を中心にした施策を進めたいケースや、O2O(後述)からシフトしたいケースでも導入がしやすく、係数化しにくい業種業態(ホスピタリティや感性を必要とするケースなど)でもとても有効です。現状の日本の場合、EC化率が5%未満のリテーラーが全体の50%(※1)とリアル店舗での売上が大きい事もありますが、ここ数年のECと比較した時にリアル店舗での心地よい購買体験が見直されてきている傾向(※2)があり、ECを意識したオムニチャネルの導入の余地はまだまだ大きいと考えます。
2:オムニチャネル(Omni Channel)のイメージ概念
上記は、オムニチャネルのアウトラインイメージですが、全てのチャネルの中心にユーザーがおり、それぞれのチャネルで体験した事を記憶し、ファンとなって販売行動へ移していきます。また常にそのブランドの動きを把握する事ができる為、自分のペースで購買行動(フィッティングから購買までの一連の流れ)を起こす事ができます。
オムニチャネルの全体アウトラインは、大きく分けると二つありオンライン(ECやウェブ広告、インフルエンサーによるブログやSNSなど)とオフライン(直営店舗やディーラー、展示会、ポップアップストア、雑誌広告など)に分かれますが、この二つが各々を融解し、シームレスな体験ができる事でいつでもどこでも購買行動を引き起こす事ができます。
3:オムニチャネルと他のチャネルの違いとスマホの普及による消費行動の変化
オムニチャネルは、O2Oやマルチチャネルと混同されやすいですが「顧客管理情報(フロントエンド)と在庫管理情報(バックエンド)が一元化されている」事で「それぞれのチャネルがシームレスに繋がる」事ができます。例えば、ポイントカードは店舗とECでポイントの合算ができないといった事がなくなり「いつでもどこでもストレスなく買い物ができる」状態を生み出していくわけです。重要なのは、心地よい実店舗での体験とECやバックヤードを含めた顧客情報の共有です。
消費行動もスマートフォンの登場で大きく変わっていきます。前述の通り「リアルタイム」「アカウントさえつくればどこでも」購買行動が起こせる事によって、オフラインとオンラインの垣根を取り払い、スマートフォン一つで買い物する事は数ある買い物方法の一つになりました。端的な一例として、店舗に足を運んでサイズを確認し、実際の買い物は価格を比較した上でECで購入するなどの消費行動が生まれてきます。いわゆる店舗のショールーム化です。店舗のショールーム化は、スマートフォン以前のEC登場時から懸念されてきた事ですが、スマホの普及により顕在化していきます。(オムニチャネルでは、販売を行わないショールーミング型店舗が台頭してきましたが、後ほど後出します)
4:オムニチャネルのシステムと各チャネルの深層化
オムニチャネルは、「顧客管理情報と在庫管理情報(バックエンド)が一元化されている」事で「各々のチャネルのシームレスな連携を可能」としていますが、各々のチャネルが深掘りされる事(SNSでは良質な情報やユーザーの感想、店舗では商品を購入する事によって得られるベネフィット=体感)が非常に重要になってきます。
今の日本でオムニチャネルを実現し、成功しているリテイラーの一つに「ヨドバシカメラ」がありますが、ヨドバシドットコムと店舗のヨドバシカメラは、どこでも同じポイントカードでポイントが貯まります。また、購入額によらず送料無料、追加料金なしでも注文当日の配達、さらには同じく追加料金なしで最短2時間30分以内に届ける「ヨドバシエクストリーム」(東京23区など限定エリア)を実施しており「どこで買っても最速で配達する」というベネフィットが他の家電量販店の追従を許さない鍵になっている感もあります。フロント&バックエンドがしっかりしているからこそできる芸当です。
オムニチャネルは、「顧客管理情報(フロントエンド)と在庫管理情報(バックエンド)が一元化されている」事で「各々のチャネルのシームレスな連携を可能」としていますが、各々のチャネルが深掘りされる事、SNSでは良質な情報やユーザーの感想であり、店舗では商品を購入する事によって得られるベネフィット=体感できるVMDなどが非常に重要になってきます。また、リアル店舗の出店先(ロケーション)は、ミドルレンジブランドほど都心や繁華街への立地優先の傾向がまだまだ大きく、これはECとのシームレスな連携を掲げるオムニチャネル戦略でもしばらく続くトレンドです(※3)
顧客管理情報(フロントエンド)と在庫管理情報(バックエンド)が一元化されている
各々のチャネルが深掘りされる事
5:オムニチャネルにおけるブランド・エクスペリエンス(店舗と展示会)
オムニチャネルにおけるブランド・アイデンティティと店舗と展示会の役割について、下記のような相関関係になります。
ここからが私たちがお手伝いできる領域になってきますがオムニチャネルにおける「店舗」と「展示会」と「ポップアップストア」は上記の図のような相関関係を持ってシームレスに補完する事ができます。オムニチャネルは、単に販売経路をシームレスに多角化するだけではなく、オンラインの接点と共に「ブランドの接点をシームレスにつなぐ」意味でも有効です。
展示会:最新の商材、コレクションを発表しユーザー体験を提供。ブランドの世界観を体感。
ポップアップストア:旬の商材を期間限定で販売。実店舗のない場所への展開で体感する機会を提供。
店舗:常設されている事で商材を手にとって確認、フィッティングできる事
6:Designcafeがご提供するオムニチャネルのデザイン(建築/空間)
Designcafeがご提供するオムニチャネルの空間デザインは次に集約されます。店舗空間とショールーム空間のデザインは、一般ユーザーのリアルなブランド体験と商品体験を提供する事で空間デザインからの印象と商品を直に見れる。仮設空間と展示会ブースとイベント空間のデザインは、ヘビーユーザーを中心にディーラーや商社など販売に携わる人たちとの接点をデザイン。新製品発表会やコレクション発表など。本社屋、製造部門などの建築と空間デザインは、ヘビーユーザーやステークホルダーとの接点をデザイン。ブランドヘリテージの訴求や品質訴求など、根底にあるマインドを伝える場としても機能します。
Designcafeがご提供するオムニチャネルのデザインは次の通りです。
1:店舗空間とショールーム空間のデザイン(ショールーミング型店舗含む)
2:仮設空間と展示会ブースとポップアップストアなどのイベント空間のデザイン
3:本社屋、製造部門などの建築と空間デザイン
この3つの領域のデザインをシームレスに計画し、VI(ビジュアルアイデンティティ=ECやウェブサイト、グラフィックデザインなど)とSI(ストアアイデンティティ=店舗デザインやポップアップストアの空間デザイン)を統合させながら、展示会ブースでのBIとMDの訴求を念頭に置いた空間デザインをご提案します。私たちの最大のメリットは、同じデザインチームが3つの領域の建築・空間デザインを手がける事で、VIやSIといった統合的なBIを計画、実行できる事です。また、オムニチャネル化をスタートさせ、先行している既存のクリエイティブチーム(主にグラフィックやUXなどのVI主体でプロジェクトを先導)に建築・空間デザイナーとしてDesigncafeが加わり、クロスファンクショナルなクリエイティブワークを推進することも可能です。
店舗や展示会ブースのような空間デザインは、単に商品を直に見て触れてフィッティングできる場としての機能以外にも「ブランドタッチポイント」としての情緒的な価値観をユーザーに感じていただく役割を持っています。この二面性をいかに上手に帰着させるかが腕の見せ所になります。
7:オムニチャネルならではのリアルタッチポイント。ショールーミング型店舗
オムニチャネルならではのリアルタッチポイントとして注目を集めているショールーミング型店舗は、店舗では商品のバリエーションやフィッティングのみに割り切り、実売はRFIDなどのタグをスマホで読み込み、専用ECから購入するスタイル。アメリカでは散見するようになりました。日本でも導入しているメーカー(アシックスなど)が出てきています。ショールミング店型舗のメリットは下記に集約されると思われます。
1:ライナップのみのMDで在庫を持つ必要がないため、バックヤードを確保しなくて良い。
2:店舗面積をコンパクトに抑える事ができる為、人員数を軽減でき、接客のみに集中できる。
3:レジや万引き防止用のセキュリティーが必要ないため、インフラコストを軽減できる。
4:導入ケースが少ない割りにインタラクティブに顧客体験ができる。
5:ECからの購入となる為、購買行動が可視化でき、マーケットデーターとしての蓄積が容易。
特に自動車所有率が低く、電車での移動が中心&混雑の激しい都心部では買い物時に荷物を持たなくて済むメリットはとても大きく、今後のニーズが高まってくる予感があります。また、出店側から見ると店舗の初期投資を通常店舗より下げる事ができる(地代家賃、人件費、セキュリティーコストなど)為、メリットが大きく導入ケースは今後増えていくと思われます。
現状のリアル店舗は、立地優先(海外ブランド)や収益性優先(主に国内ブランド)と大きな変化見られませんが、オムニチャネル化された店舗は今後「バックヤードのような物流機能を兼ね備えた大型店」か「都心の1〜2等立地に出店するショールーミング型店」に集約されていく可能性が高いと思われます。ショールーム型店舗を増やして売り上げはEコマースから得る、あるいはリアル店舗を増やしてソリューションサービスの提供に力を入れるといった二極化した展開が今後のトレンドになりそうです。
※このページは2018年に某誌に寄稿した文章を2019年に大幅に加筆したものです。
ぜひ、オムニチャネル化をご検討されているリテイラー様、アパレル、物販チャネルのメーカー様 Designcafeにご相談ください。 |
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