Singapore

Designcafe™ の主宰者、平澤太のブログです。デザイン考、ライフワーク、インサイト、旅行などを不定期に綴っています。

Singapore 2013 Vol.3 サザンリッジス

2日目の午前中は、サザンリッジスへ “The Southern Ridges”へ
2008年5月に完成したサザン・リッジスは、2000年代初めに、この一帯の丘ごとにある公園を遊歩道でつないで、人々が自然散策を楽しめるルートにしようという計画が都市再開発庁(URA)で浮上したのが始まりで、最終的には全ての国立公園を遊歩道でつないでいくという途方も無い計画の一端です。このサザンリッジス、全ての行程を歩くと3時間程度掛かるため、僕たちはホートパーク(HORT PARK)からフォレストウォーク(Forest Walk)〜ヘンダーソンウェーブ(Henderson Waves)〜ヒルトップ・ウォーク(Hilltop Walk)〜マウントウェイバーパーク(Mt, Faber Park)を目指すコースで散策しました。

まず見えてくるのは、アレクサンドラ・アーチ(Alexandra Arch)。アレクサンドラ・ロードに掛けられた、アーチが個性的なデザインの陸橋です。設計はシンガポールの建築事務所、LOOK Architects Pte。ちなみにアレクサンドラ・アーチからフォレスト・ウォークまでのルートは、シカゴ建築・デザイン博物館とヨーロッパ建築アートデザイン都市研究センターが行っている国際建築賞でベスト・グローバル・デザイン賞を2009年に受賞しており、国際的に注目されています。この橋を超えるとフォレスト・ウォーク。その名の通り、丁寧に残された原生林を出来るだけ痛めないように配慮されたスチール製の橋脚が隙間をはうように配置されていて、原生林の豊かな樹木や動物とふれあうことができます。この遊歩道は、高低差があって最も高いところだと20mくらい。床部分が雨の水が抜けるように目の細かいグレーチングで設計されていて、あまり足下がすかすかにならないようになっています。このグレーチング効果もありますが、原生林を上から眺める事ってなかなか出来ないですし、この辺のアイデアがシンガポールらしいですね。途中の看板「猿に構ったりえさ上げたら罰金!」とかもユニーク。なるべく自然の姿に忠実にしていきたい気持ちが伝わってきます。

フォレスト・ウォークを抜けるとヒルトップ・ウォーク(Hilltop Walk)と呼ばれる、舗装された山道と歩道で繋がります。この途中途中にはスコール用のシェルターが点在していたり、健康促進用(?)の遊具があったりします。ヒルトップ・ウォークを抜けるとヘンダーソンウェーブ(Henderson Waves)と呼ばれるもう一つのユニークな橋が登場。標高70mのシンガポールでは高台にあって、うねりながらのびている不思議なデザイン。設計は、国際コンペで選ばれたシンガポールの環境設計事務所 RSP Architects。夕方以降にはライトアップされる名所でもありますが、都市と自然が近接しているシンガポールならではの橋で、周辺環境に配慮されてか橋の床面は全て天然のチーク材が使用されていました。派手な外観の割にオーガニックな印象を受けます。フォレスト・ウォーク側からだと緩やかな下り坂になっていて、それ故かとても歩きやすかったです。

ちなみにフォレスト・ウォークやアレクサンドラ・アーチと言った「橋脚と橋で原生林と山間部をつなぐアイデア」はURAが起草し、それを国民へアイデアを公開。95%の賛同を取れた所で予算の手当をしています。そして国際コンペで優れたデザインを公募して実施。プロセスから国民が参画している好例です。シンガポールは、元々マレーシアの華僑が追い出される形で分離独立した歴史を持っていますが、設立当時から高いレベルでグリーンと都市の関係・その重要性を認識していて、国家主導で国を開発していったいきさつがあります。これらの開発独裁は、やもするとネガティブな印象で終わってしまいますが、マリーナベイやサザンリッジスの優れた環境開発を観る限り「お見事」としか言いようがありません。優れたマネージメントが素晴らしい環境を生み出し、その背景には国民の理解があるということ。いい環境を創ろうという気概が満ちています。ある程度のリーダーシップは、政府に委ねないといけませんが、こと環境に関してはそこで暮らす人々の「意識の高さ」も必要でしょうね。 

文:平澤太、撮影:平澤太・佐久間理恵

Singapore 2013 Reported by Futoshi Hirasawa
Singapore 2013 Vol.1 マーリーナベイ・サンズ
Singapore 2013 Vol.2 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
Singapore 2013 Vol.3 サザンリッジス
Singapore 2013 Vol.4 VIVO CITY
Singapore 2013 Vol.5 ピナクル@ダクストン
Singapore 2013 Vol.6 ボート・キー&チャイナタウン
Singapore 2013 Vol.7 オーチャードロード 

Singapore 2013 Vol.2 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

Garden by the Bay -ガーデン バイ ザ ベイ-

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイは、エコグリーンの先進国シンガポールが掲げる「シティ・イン・ザ・ガーデン」構想を具現化した施設であり、新都心エリアであるマリーナ・ベイエリアの101ヘクタールの区画にウォーターフロント・ガーデンを作るという壮大な計画。マリーナ・ベイエリアのシンボルと位置づけられています。

この広大なガーデンは、シンガポール政府の肝いりのガーデンであり、シンガポールが持つ、高度な緑化技術(ルーフグリーンやバーチカルグリーン)のノウハウがふんだんに盛り込まれていて、それらが6つのテーマに別れて展示されています。それぞれのガーデンは、植物の進化、熱帯雨林における樹木の役割、果実と花の機能、林床での植物の適応力、ヤシ科植物の多様性、植物と動物の相互関係が解りやすく解説されています。

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ|スーパーツリーズ|Designcafe-Inc.写真は、「スーパーツリーズ」(The Supertrees)と呼ばれる巨大な人工の木。高さ25~50メートル最も高いスーパーツリーズの屋上にはレストランもあり、2本のスーパーツリーの間には「空中遊歩道」(Skyway)が掛けられていてガーデン全体を見渡すことができます。これらのスーパーツリーのうち11本には、太陽光のエネルギーを循環利用するための機能が付いており、一番高い50メートルのツリーの頂上部には、レストランの「スーパーツリー・ダイニング」があります。夜にはLEDのイルミネーションがプログラムによって切り替わり幻想的な風景を演出。来場者に楽しんでもらえる工夫&スタティックな展示にとどめないところがシンガポールらしくて良いですね。

その他、永遠の春を具現化(気温を23~25度で設定)し、地中海の涼しく乾燥した気候に育つ花や木を展示する「フラワー・ドーム」(Flower Dome)、高さ35メートルの人口の山から滝が落ちる「クラウド・フォレスト」(Cloud Forest)という2つのドーム施設があります。セネガルのバオバブの木や樹齢1000年にもなるオリーブの木なども見所の一つです。これらのスーパーツリーズとフラワードームは、気化熱や雨水が相互に循環するようにできていて、環境に優しい仕組みになっています。

フラワードームとスカイウェイは有料(20ドル〜4ドル程度)ですが、それ以外は無料で見学でき、食事が出来るイートインもファーストフードもあるので、お腹がすいても大丈夫。こういう一見、お固い感じにみえるテーマ型ガーデンでも飽きさせない工夫とイベント性、話題性を兼ね備えていて、これに掛ける運営者側の「強い想い」を感じました。これでも全体の2/3程度の完成度ですから、全て完成したらシンガポール(というかマリーナベイの)新しい話題スポットになるのでしょうね。  
テキスト&撮影:平澤 太

Singapore 2013 Reported by Futoshi Hirasawa
Singapore 2013 Vol.1 マーリーナベイ・サンズ
Singapore 2013 Vol.2 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
Singapore 2013 Vol.3 サザンリッジス
Singapore 2013 Vol.4 VIVO CITY
Singapore 2013 Vol.5 ピナクル@ダクストン
Singapore 2013 Vol.6 ボート・キー&チャイナタウン
Singapore 2013 Vol.7 オーチャードロード 

Singapore 2013 Vol.1 マーリーナベイ・サンズ

2013年の定例研修先は、シンガポール。昨年に引き続き、海外の都市に赴き”感じ取ってくる”事を目的に行っているのですが、それは写真やインターネットの情報で解ったつもりでも、実際体感してみるとスケール感やボリューム感、空気感、香りなど五感を働かせないと解らない事が多いからです。

今回のシンガポールは、個人的には3回目の訪問だったのですが、前回が8年前ですから街の様相もだいぶ変わり、マリーナベイを中心としたリゾート開発(Marina Bay Sands, Gardens by the bayなど)はもちろん、開明的な環境保全プログラム(Southem Ridgesなど)、国民の90%が住宅所有者(マンション含む)であり、その根底を支えている住宅開発局”HDB”の最新事例(The Pinnacle@Duxtonなど)、世界最先端のバーチカル&スカイグリーンの事例(PARKROYAL on Pickering)、日本人建築家がマスタープランを計画した商業施設(VIVO CITY)など見学したいものが目白押しで、これらの見学や体感から得た情報を”引き出し”として、今後の仕事に役立てられればと。 また、単に見学だけでは面白くないので、ローカルフードのレストランやホーカーズ、Barなども時間を見つけては立ち寄り、その街のローカルな空気感みたいなものも感じながら、自分たちが楽しむことを忘れずに(笑) 廻ってきました。

マリーナベイサンズ|ガーデンバイザベイ側からの遠景|Designcafe-Incベースになるホテルですが、マリーナベイ・サンズ(Marina Bay Sands)に泊まりました。シンガポールで、今一番ホットなホテル&リゾートですが、後述するパークロイヤルオン・ピッカリング(PARKROYAL on Pickering)も素晴らしく、次回はこちらかなと w   マリーナベイ・サンズは、ラスベガスのカジノオペレーターであるサンズが2010年に開業したカジノ&リゾート。設計は、ルイスカーンのお弟子さんでもある Moshe Safdie。「世界で最も高いところ(地上200m)にあるプール=Infinity Pool」で一躍有名になったホテルで、日本でもSMAPがCMのロケ場所として使ったので有名ですね。この名物プールに入場するには「宿泊しないと入れない」事と裏庭にあたる「ガーデン・バイ ザ ベイ  Gardens by the bay」も見学目的だったこともあり迷わずこちらにしました。

マリーナベイサンズ|デラックスルームのベット|Designcafe-Incホテルの部屋はデラックスルームでしたが、デラックスという程のものではなく(笑)至って普通の設え。僕らはこの部屋で十分でしたが、ラグジュアリーな空間でのステイを望まれるなら、もうワンランク上げた方が良いでしょうね。ホスピタリティも可もなく不可もなくですが、チェックインに時間が掛かるのは改善して欲しいです。6時間のフライトでチェックインに30分以上待たされると疲れが倍増しますし。

マリーナベイサンズ|インフィニティプールのレーザーショー|Designcafe-Incこのホテルの目玉である、Infinity Poolは各タワーの57階にあって、夜の11時まで利用することができます。プールとガーデンとジャグジーで構成されていて、寒くてもお風呂に入ることができ、またタオルコンシェルジュが常設されているので、暖かいタオルを無料で使うことができます。至れり尽くせり。高台にあることもあって、結構潮風が強く、タオルを羽織っていないと風邪引きます(シンガポールの室内はエアコンが効きすぎているので、暑い日でも、そのギャップに慣れるのが大変)。殆どの人は部屋で着替えて部屋のガウンを羽織ってそのままプールへ直行していました。ちなみにこのプールの上方で夜のレーザーショーが行われるので、プールの袖でこれを観るのも楽しいです。

マリーナベイサンズ|ショッピングモールのスケートリンク|Designcafe-Incこのマーリーナベイ・サンズは、運営会社がラスベガスのカジノオペレーターということもあって、施設全体の創りがラスベガスのエンターテイメントホテル&リゾートのスタイルを踏襲しています。地下にはカジノ、アネックスにはショッピングモール、そして屋上はプールと行った具合に「一つの場所で全てが完結する」ように計画されています。日本もカジノを解禁すれば、このようなスタイルのホテル&リゾートが出来るのでしょうが、施設の中に目玉を創る「ラスベガス方式」が世界的にはスタンダードである現実を考えるとカジノの有無は、ビジターの多寡に拠るのでしょうね。

 とにもかくにも、このホテルの魅力を出しているのは「Infinity Pool」。常夏でコンパクトな街、シンガポールならではのアイデアであり、特に観光資源となりうるものが少ない故に生まれたとも言えます。このアイデアそのものが日本で使えるかどうかは解りませんが、観光資源が多いのにキャッチアップする要素が少ない日本の宿泊施設は見習うところが多いと思います。  
テキスト&撮影:平澤 太

Singapore 2013 Vol.1 マーリーナベイ・サンズ
Singapore 2013 Vol.2 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
Singapore 2013 Vol.3 サザンリッジス
Singapore 2013 Vol.4 VIVO CITY
Singapore 2013 Vol.5 ピナクル@ダクストン
Singapore 2013 Vol.6 ボート・キー&チャイナタウン
Singapore 2013 Vol.7 オーチャードロード