シンガポール

Designcafe™ の主宰者、平澤太のブログです。デザイン考、ライフワーク、インサイト、旅行などを不定期に綴っています。

Singapore 2013 Vol.4 VIVO CITY

ハーバーフロントに建つシンガポール最大のショッピングセンターがビボ・シティ(VIVO City)。セントーサ島の出入り口にあたりますが、ハーバーフロント計画の目玉として、また地元の人が普段使いのショッピングセンターとして建設されたもので、基本計画と基本設計は伊東豊雄建築設計事務所で施工は五洋建設が担当しています。

ビボ・シティのユニークなところは、施設の屋上に屋上湖などを擁するスカイガーデンを設置し、海側を開放的なテラスを設ける事で、ショッピング以外の目的にも耐えうる施設になっている事です。また、幹線道路側の壁面の意匠はフィーチャー・ウォールと呼ばれる奔放な三次曲線で構成されていて、この時期の伊藤建築を準えたような外観を有します。この二つの機能とデザインが最大の特徴ですが、テナントの構成も面白く、昔の露店街を再現したカフェテラスがあったり、衣食遊のスペシャリティストアを低層階に集約していたりとてもユニークです。

ちなみに基本設計時のコンセプトは波をメタファーとした「サーフィン」で、このサーフィンを具現化したカタチがフィーチャー・ウォール。このフィーチャー・ウォール、デザインはともかく施工の精度の問題なのか、全体としてハリボテに見えてしまって少し残念でした。商業施設としては破天荒な印象が強いですが、ファシリティの構成は巧妙で、一日いても楽しめるように工夫されています。

 文:平澤太、撮影:平澤太・佐久間理恵

Singapore 2013 Reported by Futoshi Hirasawa
Singapore 2013 Vol.1 マーリーナベイ・サンズ
Singapore 2013 Vol.2 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
Singapore 2013 Vol.3 サザンリッジス
Singapore 2013 Vol.4 VIVO CITY
Singapore 2013 Vol.5 ピナクル@ダクストン
Singapore 2013 Vol.6 ボート・キー&チャイナタウン
Singapore 2013 Vol.7 オーチャードロード

 

Singapore 2013 Vol.3 サザンリッジス

2日目の午前中は、サザンリッジスへ “The Southern Ridges”へ
2008年5月に完成したサザン・リッジスは、2000年代初めに、この一帯の丘ごとにある公園を遊歩道でつないで、人々が自然散策を楽しめるルートにしようという計画が都市再開発庁(URA)で浮上したのが始まりで、最終的には全ての国立公園を遊歩道でつないでいくという途方も無い計画の一端です。このサザンリッジス、全ての行程を歩くと3時間程度掛かるため、僕たちはホートパーク(HORT PARK)からフォレストウォーク(Forest Walk)〜ヘンダーソンウェーブ(Henderson Waves)〜ヒルトップ・ウォーク(Hilltop Walk)〜マウントウェイバーパーク(Mt, Faber Park)を目指すコースで散策しました。

まず見えてくるのは、アレクサンドラ・アーチ(Alexandra Arch)。アレクサンドラ・ロードに掛けられた、アーチが個性的なデザインの陸橋です。設計はシンガポールの建築事務所、LOOK Architects Pte。ちなみにアレクサンドラ・アーチからフォレスト・ウォークまでのルートは、シカゴ建築・デザイン博物館とヨーロッパ建築アートデザイン都市研究センターが行っている国際建築賞でベスト・グローバル・デザイン賞を2009年に受賞しており、国際的に注目されています。この橋を超えるとフォレスト・ウォーク。その名の通り、丁寧に残された原生林を出来るだけ痛めないように配慮されたスチール製の橋脚が隙間をはうように配置されていて、原生林の豊かな樹木や動物とふれあうことができます。この遊歩道は、高低差があって最も高いところだと20mくらい。床部分が雨の水が抜けるように目の細かいグレーチングで設計されていて、あまり足下がすかすかにならないようになっています。このグレーチング効果もありますが、原生林を上から眺める事ってなかなか出来ないですし、この辺のアイデアがシンガポールらしいですね。途中の看板「猿に構ったりえさ上げたら罰金!」とかもユニーク。なるべく自然の姿に忠実にしていきたい気持ちが伝わってきます。

フォレスト・ウォークを抜けるとヒルトップ・ウォーク(Hilltop Walk)と呼ばれる、舗装された山道と歩道で繋がります。この途中途中にはスコール用のシェルターが点在していたり、健康促進用(?)の遊具があったりします。ヒルトップ・ウォークを抜けるとヘンダーソンウェーブ(Henderson Waves)と呼ばれるもう一つのユニークな橋が登場。標高70mのシンガポールでは高台にあって、うねりながらのびている不思議なデザイン。設計は、国際コンペで選ばれたシンガポールの環境設計事務所 RSP Architects。夕方以降にはライトアップされる名所でもありますが、都市と自然が近接しているシンガポールならではの橋で、周辺環境に配慮されてか橋の床面は全て天然のチーク材が使用されていました。派手な外観の割にオーガニックな印象を受けます。フォレスト・ウォーク側からだと緩やかな下り坂になっていて、それ故かとても歩きやすかったです。

ちなみにフォレスト・ウォークやアレクサンドラ・アーチと言った「橋脚と橋で原生林と山間部をつなぐアイデア」はURAが起草し、それを国民へアイデアを公開。95%の賛同を取れた所で予算の手当をしています。そして国際コンペで優れたデザインを公募して実施。プロセスから国民が参画している好例です。シンガポールは、元々マレーシアの華僑が追い出される形で分離独立した歴史を持っていますが、設立当時から高いレベルでグリーンと都市の関係・その重要性を認識していて、国家主導で国を開発していったいきさつがあります。これらの開発独裁は、やもするとネガティブな印象で終わってしまいますが、マリーナベイやサザンリッジスの優れた環境開発を観る限り「お見事」としか言いようがありません。優れたマネージメントが素晴らしい環境を生み出し、その背景には国民の理解があるということ。いい環境を創ろうという気概が満ちています。ある程度のリーダーシップは、政府に委ねないといけませんが、こと環境に関してはそこで暮らす人々の「意識の高さ」も必要でしょうね。 

文:平澤太、撮影:平澤太・佐久間理恵

Singapore 2013 Reported by Futoshi Hirasawa
Singapore 2013 Vol.1 マーリーナベイ・サンズ
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Singapore 2013 Vol.7 オーチャードロード 

Singapore 2013 Vol.2 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ

Garden by the Bay -ガーデン バイ ザ ベイ-

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイは、エコグリーンの先進国シンガポールが掲げる「シティ・イン・ザ・ガーデン」構想を具現化した施設であり、新都心エリアであるマリーナ・ベイエリアの101ヘクタールの区画にウォーターフロント・ガーデンを作るという壮大な計画。マリーナ・ベイエリアのシンボルと位置づけられています。

この広大なガーデンは、シンガポール政府の肝いりのガーデンであり、シンガポールが持つ、高度な緑化技術(ルーフグリーンやバーチカルグリーン)のノウハウがふんだんに盛り込まれていて、それらが6つのテーマに別れて展示されています。それぞれのガーデンは、植物の進化、熱帯雨林における樹木の役割、果実と花の機能、林床での植物の適応力、ヤシ科植物の多様性、植物と動物の相互関係が解りやすく解説されています。

ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ|スーパーツリーズ|Designcafe-Inc.写真は、「スーパーツリーズ」(The Supertrees)と呼ばれる巨大な人工の木。高さ25~50メートル最も高いスーパーツリーズの屋上にはレストランもあり、2本のスーパーツリーの間には「空中遊歩道」(Skyway)が掛けられていてガーデン全体を見渡すことができます。これらのスーパーツリーのうち11本には、太陽光のエネルギーを循環利用するための機能が付いており、一番高い50メートルのツリーの頂上部には、レストランの「スーパーツリー・ダイニング」があります。夜にはLEDのイルミネーションがプログラムによって切り替わり幻想的な風景を演出。来場者に楽しんでもらえる工夫&スタティックな展示にとどめないところがシンガポールらしくて良いですね。

その他、永遠の春を具現化(気温を23~25度で設定)し、地中海の涼しく乾燥した気候に育つ花や木を展示する「フラワー・ドーム」(Flower Dome)、高さ35メートルの人口の山から滝が落ちる「クラウド・フォレスト」(Cloud Forest)という2つのドーム施設があります。セネガルのバオバブの木や樹齢1000年にもなるオリーブの木なども見所の一つです。これらのスーパーツリーズとフラワードームは、気化熱や雨水が相互に循環するようにできていて、環境に優しい仕組みになっています。

フラワードームとスカイウェイは有料(20ドル〜4ドル程度)ですが、それ以外は無料で見学でき、食事が出来るイートインもファーストフードもあるので、お腹がすいても大丈夫。こういう一見、お固い感じにみえるテーマ型ガーデンでも飽きさせない工夫とイベント性、話題性を兼ね備えていて、これに掛ける運営者側の「強い想い」を感じました。これでも全体の2/3程度の完成度ですから、全て完成したらシンガポール(というかマリーナベイの)新しい話題スポットになるのでしょうね。  
テキスト&撮影:平澤 太

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