取り組んでいるプロジェクトの工場視察の合間にクライアントに連れて行って頂いた鞆の浦。2008年公開された『崖の上のポニョ』で、宮崎駿監督が構想を練った地としても有名ですが、江戸時代の港湾施設である「常夜燈」、「雁木」、「波止場」、「焚場」、「船番所」が全て揃って残っているのは全国でも鞆港のみだそうです。街並の保存状態や古くからの景勝地として国立公園に制定されたのも早く、そのノスタルジックな漁港の風情と瀬戸内の温暖な気候が織りなすフォトジェニックな風景は、のどかで心が和みます。
撮影日:2014.11.6
撮影者:平澤 太
平澤太Designcafe™ の主宰者、平澤太のブログです。デザイン考、ライフワーク、インサイト、旅行などを不定期に綴っています。
2014.11.5 Make House 木造住宅の新しい原型展
先日、Tokyo Midtown DESIGN TOUCHの一環としてガレリア コートヤードで開催された木造SE工法の展示会「MAKEHOUSE – 木造住宅の新しい原型展」に行ってきました。信頼性が高くノウハウも蓄積されている「ラーメン構造」は、強度計算が出来る素材である鉄やコンクリートでしか存在しなかったのですが、これを木造で考えたのがSE工法。在来木造では難しかった大空間の実現、部材の簡略化に拠る工程の短縮が可能になっています。この展示会では7人の建築家が2人の構造設計家の監修の元でSE工法を活用したアイデアを展開しています。
以下イントロダクションの引用ですが・・
本展、「MAKEHOUSE – 木造住宅の新しい原型展」は、その「パーツ化」プロジェクトの最初の報告です。7組の建築家がこれからの住宅にふさわしい規格寸法の考え方から、今後の住宅ビジネスの仕組みまでを含めた提案を行います。また、それぞれのアイデアをもとに設計した住宅の模型や図面などを展示します。 「パーツ化」によって、住宅をつくるために必要な部品を少なくし、最適な寸法を規格化することで、SE構法の家をより安価に、早く建てられるようになります。私たちNCNは、それによって耐震性のある木造住宅をこれまで以上に、当たり前のものにしたいと考えています。 安さや早さだけがパーツ化の利点ではありません。パーツ化によってより家づくりはシンプルになります。その結果、住む人が自分で家をつくれるようになるかもしれません。建て替え時に部品を再利用することも、格段に容易になるはずです。このように、住宅の作り方が変わることにより、デザイン性や暮らし方も変わってくるでしょう。
個人的に興味をそそられたのは、谷尻誠さんの「高床の低い家」と吉村靖孝さんの「アプリの家」です。 「高床の低い家」は開放的で耐力が確保出来るSE工法のメリットを平らではない敷地(傾斜地や湿地など)で提案しています。ここにコンパクトな建築を計画する事によって経済性の伴った住まいが実現。生活を等価に扱いながら豊かな暮らしを提案しているところに親近感があって、共感を覚えました。 一方の「アプリの家」は住宅のIKEA化ともいうべき画期的な提案でいわゆる「仕組みの提案」です。自分で設計できる。すぐに値段が分かる。をコンセプトに構造計算から設計までオールインワンでプランニング出来るアプリを提案していました。両極端な提案ですけれど、二つともSE工法ならではの提案です。
開催日 2014年10月17日(金)〜10月26日(日)
会場時間 11:00〜21:00
参加建築家 鈴野浩一/禿真哉(トラフ建築設計事務所)、谷尻誠(Suppose Design Office)、長坂常(スキーマ建築計画)、中山英之(中山英之建築設計事務所)、藤村龍至(藤村龍至建築設計事務所)、藤原徹平(フジワラテッペイアーキテクツラボ)、吉村靖孝(吉村靖孝建築設計事務所)
主催 株式会社エヌ・シー・エヌ
監修 播繁(構造家)、池田昌弘(構造家)
2014.11.1 チタン / 3Dプリンティング〜マテリアルの原石」展
東京大学生産技術研究所S棟1階ギャラリーで開催していた「チタン / 3Dプリンティング〜マテリアルの原石」展へ行ってきました。 東京大学の先端研究をデザインし展示する企画「Research Portrait」の一環でチタンと3Dプリンティングの可能性が垣間みれる面白い展示です。
以下イントロダクションからの引用ですが
01のテーマはチタンと3Dプリンティング(AM: アディティブ・マニュファクチャリング)。「強く、軽く、錆びない」といわれ、高級なイメージのあるチタン。どのような形でも自在に作れるかのようにいわれる3Dプリンティング。どちらも現在、とても注目度の高い「マテリアル」ですが、いまの技術の限界から、まだまだ人々には少し遠い存在です。そして、その性質や性能について、正しく理解されているとは言い難くもあります。
わたしたちの生活は、技術の進歩により変わっていきます。チタンの精錬技術が向上したとき、また、3Dプリンティングの製造技術が発展したとき、デザイナーたちは、エンジニアたちは、どのようなプロダクトを生み出せるでしょうか。
今回の展示では、チタン製家具や3Dプリンティングよる電動義手やロボット、そしてさまざまな実験サンプル、技術資料などを通して、いまより少し先のプロダクトの可能性を考えます。未来のかけらを一緒に見つけていただければ幸いです。
チタンの展示写真を取り損ねてしまったのですけど、「3Dプリンターでここまで出来る」という可能性を見ながら、チタンと言う素材の持つポテンシャルを素人でもわかり易いように展示されていて、またその展示がとても美して思わず見入ってしまいました。以下はその様子です。
今では数万円で手に入るまでになった3Dプリンターですが、当初は石膏やプラスチックなどをプリントするのが主流で、そこから他の素材への転用が試みられています。そのなかで衝撃的だったのが粉末チタンを活用した芸術的な3Dプリントチタンラグを創り自転車界に衝撃を与えたVORWAERTZ(ドイツ)。そのあとCHARGE(イギリス)が3Dプリント・チタンドロップアウトを発表し、3Dプリントチタンもここまで来たのかと思ったものです。VORWAERTZはアートとしての可能性をCHARGEは実用性に主眼を置いていますが、審美性も実用性もスタンダード化していくプロダクトデザインにとっては重要な要素ですから、この二つの可能性には非常に興味にそそられます。
チタンを使った3Dプリンターの可能性は究極のマニファクチャーです。人の手で生み出す事の対極にある3Dプリンターですが、金型がいらずデザインから製造までのプロセスがシームレスに一貫性をもって生み出す事ができる3Dプリンターの可能性には遠くない未来を感じます。そんな未来のかけらが垣間みれた素敵な展示でした。
「チタン / 3Dプリンティング〜マテリアルの原石」展
日時 | 2014年10月23日(木)- 11月2日(日) 11:00 – 19:00(入場無料) |
場所 | 東京大学生産技術研究所S棟1階ギャラリー |
主催 | 東京大学山中研究室、岡部研究室、新野研究室 |
協力 | アスペクト株式会社、トーホーテック株式会社、東京大学前田研究室 |
駒場にある東京大学生産技術研究所へ行ったのはこれが二回目なのですが、佇まいがあって素晴らしい環境。正門から奥にあるS棟まで写真を撮りながら歩いてしまいました。笑 途中のメインビルディングは建築家原広司さんの設計。新旧の建築が広大な敷地に点在していて独特の景観を生み出しています。S棟は使わなくなった風洞実験の施設をコンバージョンしており、S棟含めた周辺の佇まいがどことなくバウハウスのデッサウ校の雰囲気にも似ていて(笑)面白かったです。