artek

Designcafe™ の主宰者、平澤太のブログです。デザイン考、ライフワーク、インサイト、旅行などを不定期に綴っています。

Helsinki / Porvoo 2017 Vol.04 | Alvar Aalto STUDIO

アアルトスタジオの正面外観

アアルトスタジオの正面外観

アアルトスタジオの裏側

アアルトスタジオ、中庭からのビュー

アアルトスタジオ、食堂を外から眺める。

アアルトスタジオの中庭から眺める

アアルトスタジオの中庭から眺める。

アアルトスタジオの隣地

アアルトスタジオのサインプレート

1Fトイレの建具

1F食堂へ向かう廊下の照明

2Fのワークスペース(製図室)。往年の状態で残されており、製図板や各種定規などの道具と当時のドローイングを見ることができます。

天井が傾斜して片流れの屋根になっているのは、ハイサイドから差し込む太陽の光を天井に反射させて、室内を明るくするため。

2Fのアアルトの仕事部屋。作品展示と膨大なドローイングの原本が保管されています。

アアルトの仕事部屋の棚にある膨大なドローイングのアーカイブ

アトリエスペース。アアルトの石像や建築模型、スツール60をはじめとするartekのチェアやテーブルやパイオミチェアがずらりと並んでいます。

アトリエスペースから中庭を眺める

アトリエスペースから中庭越しに食堂がある棟を眺める

アトリエスペースのサッシュとカーテンレールのディティール

アトリエスペース中庭側の開口部

アトリエスペースは、照明器具の検証や家具のサイズ感、所員のミーティングなどに活用されていたそうです

アアルトの仕事部屋を別角度で

ワークスペースと階段

ワークスペースより中庭を眺める

1Fの食堂。

Alvar Aalto(アルヴァーアアルト)の自邸からスタジオ・アアルトへ

自邸からスタジオへは徒歩で5分くらい。とても近所にあります。アアルトの自邸の竣工から20年後の1955年、自邸から歩いて10分ほどの場所に新しいスタジオをつくりました。ヘルシンキ工科大学やフィンランド国民年協会などの大規模プロジェクトを手がけはじめ、自邸の仕事場では手狭となってしまったためで、敷地の傾斜を活かしてつくられた中庭が広がるアトリエスペースには、パイミオチェアやスツール60、アルテックの名作椅子やテーブルがずらりと並んでおり、アアルトがデザインした照明や、曲げ木のサンプル、建築模型や貴重な図面も展示されています。 

アアルトスタジオの正面外観

アアルトスタジオの裏側

アアルトスタジオ、中庭からのビュー

アアルトスタジオ、食堂を外から眺める。

アアルトスタジオの中庭から眺める。左がワークスペース。

アアルトスタジオの中庭から眺める。正面がワークスペース

アアルトスタジオの隣地

 アアルトのスタジオの建築形状は、コの字型をしており1Fにアアルト財団のオフィス(昔はMTGスペース)と食堂、車庫、トイレがあり、スタジオの中枢であるワークスペースは全て2Fにあります。RCと組積と木造のハイブリッド構造です。傾斜地を巧みに活用して計画されていることもあり、中庭からだと1F部分が埋没して見えます。このランドスケープとの関係性がアアルトスタジオの魅力の一つになっています。

アアルトスタジオのサインプレート

1Fトイレの建具

1F食堂へ向かう廊下の照明

1Fの食堂。ここで食事をまかなっていたそうです。帆布がシェードになっていて美しい照明になっています。

2Fのワークスペース(製図室)。往年の状態で残されており、製図板や各種定規などの道具と当時の模型やドローイングを見ることができます。

天井が傾斜して片流屋根になっているのは、ハイサイドから差し込む太陽の光を天井に反射させて、室内を明るくするため。

2Fのアアルトの仕事部屋。作品展示と膨大なドローイングの原本が保管されています。

アアルトの仕事部屋の棚にある膨大なドローイングのアーカイブ

アトリエスペース。アアルトの石像や建築模型、スツール60をはじめとするartekのチェアやテーブルやパイオミチェアがずらりと並んでいます。

アトリエスペースから中庭を眺める

アトリエスペースから中庭越しに食堂がある棟を眺める

アトリエスペースのサッシュとカーテンレールのディティール

アトリエスペース中庭側の開口部

アトリエスペースは、照明器具の検証や家具のサイズ感、所員のミーティングなどに活用されていたそうです

アアルトの仕事部屋を別角度で

ワークスペースと階段

ワークスペースよりエントランス側を眺める

とても機能的で、働きやすい環境を腐心して創ったことがディティールからも見えてきます。このスタジオも自邸もフィンランド湾にほど近い場所にあり、ヘルシンキの中心地へも20分程度で行くことができます。この周りの環境と静粛さが相まって、このスタジオの魅力を生み出している部分も見逃せません。

 アアルトのアトリエ(スタジオ・アアルト)はガイドツアー(英語/€17)でのみ見学ができます。(火〜土曜/5月〜9月 11:30〜と12:30〜の2回/10月〜4月 11:30〜の1回)所要時間は約40分。ガイドツアーのあと、写真撮影や自由見学ができます。個人で見学する場合は予約は不要。

 

 

 

Helsinki / Porvoo 2017 Reported by Futoshi Hirasawa 
 

 

 

 

Helsinki / Porvoo 2017 Vol.03 | Alvar Aalto House

ヘルシンキ中心街から4番トラムに乗ります

4番トラムの車窓の風景。

4番トラムの車窓の風景。

Alvar Aalto(アルヴァーアアルト)の自邸正面

アアルト自邸の作業スペース。もともと自宅兼スタジオとして活用していたので、奥にライブラリースペースがあります。

アアルト自邸の作業スペースからダイニングへアクセスする引き戸。日本の建築からインスピレーションされたそう。

アアルト自邸。作業スペースから二階へのアクセスは暖炉を格納した階段で。その奥にライブラリーがあります。

アアルト自邸のダイニングエリア。

アアルト自邸のダイニングにあるピアノ。奥さんで同じ建築家のアイノ・マルシオのデザイン。自分のデザインのピアノがあるなんて素敵だなあと。

アアルト自邸のダイニング。スタジオスペースの反対側からのビュー。

アアルト自邸のダイニング。スタジオスペースの反対側から視点を変えて。

アアルト自邸のダイニングの書棚。

アアルト自邸のキッチンダイニング。意外と狭いですがとても機能的。

アアルト自邸のキッチン。ここは進入禁止エリアでした。

アアルト自邸の2階の子供部屋。

アアルト自邸の2階の寝室。

アアルト自邸の二階にあるラウンジ。冬の長い夜はここで過ごすことが多かったそうです。

アアルト自邸の二階にある、アアルト夫妻の寝室。

アアルト自邸の二階の窓。豊かな自然が広がっています。

アアルト自邸のライブラリースペース。

アアルト自邸のスタジオスペースにあるアアルトのデスク。ワーカーホリックではなかったようですが、近所にスタジオを移した後もここで仕事をすることが少なくなっかたようです。

スタジオスペースの別ビュー

アアルト自邸の収納。

アアルト自邸のラウンジエリア。座るとこんな感じ。

裏庭からの外観。木造と組積造のハイブリッドで粗い仕上がり。

アアルト自邸。裏庭からの外観。

アアルト自邸の外観。蔦で覆われてしまった壁。

アアルト自邸の正面側の外観。壁に隔てられており、勝手口といった感じ。

アアルト自邸ファサード面。

バーチ材の外壁のディティール。下端まで返しがあって丁寧な納まり。

Alvar Aalto(アルヴァーアアルト)を足跡を辿る

翌日は、Alvar Aalto(アルヴァーアアルト)の自邸とスタジオを見学にヘルシンキ郊外へ向かいました。モダニズムの巨匠の一人であるアルヴァーアアルトは、フィンランドが生んだ20世紀を代表する世界的な建築家、都市計画家、デザイナーであり、その活動は建築から家具、ガラス食器などの日用品のデザイン、絵画までと多岐に渡リます。 また、建築家、デザイナーとしての立ち位置に止まらず、プロダクトマニファクチャーである artek (アルテック) をパトロンや元所員と一緒に立ち上げたデザインプロデューサーとしての足跡も残しています。

Alvar Aalto(アルヴァーアアルト)の自邸

Alvar Aalto(アルヴァーアアルト)の自邸とスタジオを見学

アアルトの自邸は1935-36、アアルトが37歳の年に計画、建設されました。大学卒業後はしばらくユヴァスキュラやトゥルクなど地方都市を拠点として活動していましたが、仕事や家族に恵まれるようになり、ヘルシンキへの移住を考えるようになったそうです。アールトは、仕事に便利で自然環境にも恵まれた場所を探し、ヘルシンキ郊外のムンッキニエミという閑静なベイエリアに自邸を建てました。ヘルシンキの中心街からムンッキニエミ地区までは、4番トラムが直通しており停留所から歩いて2分くらいの場所にあります。

ヘルシンキ中心街から4番トラムに乗ります

4番トラムの車窓の風景。

停留所おり、歩いてアアルトの自邸へ

Alvar Aalto(アルヴァーアアルト)の自邸正面

アアルト自邸のスタジオスペース。もともと自宅兼スタジオとして活用していたので、奥にライブラリースペースがあります。

アアルト自邸のスタジオスペースからダイニングへアクセスする引き戸。日本の建築からインスピレーションされたそう。T型定規がオブジェのごとく飾られています。

アアルト自邸。スタジオスペースから二階へのアクセスは暖炉を格納した階段で。その奥にライブラリーがあります。

アアルトの自邸は、元々自宅兼スタジオとして建設されたので、エントランスから二手に分かれる動線になっており、一つはスタジオの前室へ、もう一つは自宅のダイニング&ラウンジの廊下へ繋がっています。非常に機能的。自宅兼スタジオは今でもデザイナーが独立するときのスタイルとして定番ですけど、大御所も御多分に洩れず、だったんですね。 

アアルト自邸のラウンジエリア。ガイドさんに説明してもらっています。

アアルト自邸のラウンジにあるピアノ。奥さんで同じ建築家のアイノ・マルシオのデザイン。自分のデザインのピアノがあるなんて素敵だなあと。

アアルト自邸のラウンジ。スタジオスペースの反対側からのビュー。

アアルト自邸のラウンジ。スタジオスペースの反対側から、別の角度のビュー。

アアルト自邸のラウンジ。スタジオスペースの反対側から視点を変えて。

アアルト自邸のラウンジの書棚。ダイニングスペースの間仕切り壁になっています。

アアルト自邸のキッチンダイニング。意外と狭いですがとても機能的。

アアルト自邸のキッチン。ここは進入禁止エリアでした。良いコンディションに保たれています。

アアルト自邸の2階の子供部屋。ベットの下は収納になっています。

アアルト自邸の2階の寝室。

アアルト自邸の二階にあるラウンジ。冬の長い夜はここで過ごすことが多かったそうです。

アアルト自邸の二階にある、アアルト夫妻の寝室。モダンなリビング。

アアルト自邸の二階の窓。

アアルト自邸のライブラリースペース。

アアルト自邸のスタジオスペースにあるアアルトのデスク。ワーカーホリックではなかったようですが、近所にスタジオを移した後もここで仕事をすることが少なくなっかたようです。

スタジオスペースの別ビュー。こじんまりとしたスタジオ。

アアルト自邸の収納。

アアルト自邸のラウンジエリア。座るとこんな感じ。

アアルト自邸のインテリアは、仕事が軌道に乗ってきた頃のアアルトの情熱を感じることができ、それまでの新古典主義的な作風から、モダニズムにシフトし、さらにモダニズムの空間に相反するフィンランドの伝統的材料である木材を用いることで、アールト独自のモダニズムのあり方を模索している感じが色濃く出ています。この後の作品は、ラウンドやアーチが多用されますが、これはサブネーム(偽名)であるアアルトの名前の意味(アアルトはSuomiで波という意味)から着想されているようです。

裏庭からの外観。木造と組積造のハイブリッドで粗い仕上がり。

アアルト自邸。裏庭からの外観。ブリックとバーチ材の外壁のコントラストが美しい家。

アアルト自邸の外観。蔦で覆われてしまった壁。

アアルト自邸の正面側の外観。壁に隔てられており、勝手口といった感じ。

アアルト自邸ファサード面。右側がスタジオスペース、左側が自宅スペースで自宅側は壁でプライバシーを考慮しています

バーチ材の外壁のディティール。軒下はトタンの波板。ランプシェードは住居表示のようです。

建築のデザインも空間同様、後のアアルトの作風を決定づけるモダニズムのアアルト的な解釈が随所に見て取れます。1935年当時の限られた建材を工夫して活用しており、端正なデザインだけど随所に工夫が詰まっていて情熱を感じます。ランドスケープとの連携、緩やかなプライバシーの確保など秀逸なプランニングから生み出される風景は、建築と空間が持つ根源的な価値を改めて感じ取ることができ、アアルトの偉大さが見て取れる住宅です。

Alvar Arlto kotitalo(アルヴァル・アアルト・コティタロ/アアルトの自邸)
住所:Riihitie 20, 00330 Helsinki
TEL:+358 9 481 350
メール予約先:riihitie (at) alvaraalto.fi
アクセス:アールトのアトリエから徒歩約15分/
トラム4「Laajalahden aukio」下車徒歩約5分
ガイド開始時間:火~土曜13:00~、14:00~、15:00~
(5~9月は16:00~も、さらに8月は17:00~も)
休館日:月曜(8月は無休、1月は土曜のみ催行)、12月
入場料:17ユーロ(学生8ユーロ)
※同日にアールト自邸も見学する場合のセット券は30ユーロ(学生14ユーロ)
※2017.8.30時点の情報です

 

 

Helsinki / Porvoo 2017 Reported by Futoshi Hirasawa 
 

 

 

Helsinki / Porvoo 2017 Vol.02 | Helsinki Design District / ヘルシンキの街

Design districtと呼ばれるエリア

GLO ART HOTEL近くの街並み

バーやクラブなど、五感を刺激する店が軒を連ねます。

1920年代の建物。中身はデザインスタジオ。

デザイン ディストリクトの車道の風景。

トラムの標識

デザイン ディストリクトの夕景

 ヘルシンキ・デザインディストリクト

Design districtと呼ばれるエリア

デザイン・ディストリクトは、クリエイティブなお店を全て同じエリアに集結させようというアイデアで、2005年に地元の人々が率先して始めたのがスタート。デザイン・フォーラムを中心に、ギャラリー、ファッション、レストランなどアート性に長けた店舗が軒を連ねるエリアで、現在では25の通り、200のお店やデザインスタジが点在します。具体的にはにはジュエリー工房、デザイン・アンティークのお店、ファッションのお店、博物館、アート・ギャラリー、レストラン、ホテル、ショールームなどがあり、「デザイン」をテーマに北欧ならではの切り口で発信しています。

バーやクラブなど、五感を刺激する店が軒を連ねます。

デザイン・ディストリクトの中心はディアナプイスト公園です。ここからカールティンカウプンキ地区、カンッピ地区、プナブオリ地区、ウッランリンナ地区のエリアまで広がっています。自然発生的な運動とはいえ、ヘルシンキの中心地にこのようなエリアが出来、政府が後押しし助成しながら育んでいるのは、ヘルシンキの観光資源が限られているからです。限られた観光資源を最大限に活用する姿勢が、政府支援のヘルシンキガイドの解説にも現れています。

ヘルシンキのデザインディストリクトは、活気あるクリエイティビティの中心で、ヘルシンキの街のまさに中心にあります。フィンランドの首都では、偶然でも意図的でも至る所でデザインの歓迎を受けます。デザインディストリクトは、プナヴオリ、カールティンカウプンキ、クルーヌハカ、カンッピ、ウッランリンナなどのダウンタウンのいくつかの地区に広がり、デザインディストリクトを訪れることで街の探索も楽しめます。

トラムの標識

1920年代の建物。中身はデザインスタジオ。

デザイン ディストリクトの車道の風景。

デザイン ディストリクトの夕景

GLO ART HOTEL近くの街並み

このようなスタジオショップが多く点在。

 デザインディストリクトは、ヘルシンキの一番美しい地区を含んでいます。石畳の通りにユーゲント様式の建物が並び、多くの若いクリエイティブたちが拠点としています。最近のトレンドは、オープンスタジオ。アーティストやローカルに会うこともできます。作業場がそのままショップやギャラリー、カフェになっていて、お店を見ながらコーヒーやワインが楽しめるところもあります。割とこの辺の流れは、カチクラ(御徒町ー蔵前)に点在するショップ、職人、デザイナーの流れに似ていて親近感が湧きますね。

ただヘルシンキが進んでいるのは、街の中心地にこのようなディストリクトがあること。普通、クリエイティブなディストリクトは、ニューヨークでもロンドンでもミラノでもバルセロナでも東京も例外ではないですが、中心地ではなく地価が落ち着いたエリア‥大抵は中心地よりやや外れに点在するのが常です。街の規模がコンパクトなことも起因しているのかもしれませんが、とても羨ましく感じました。

 

Helsinki / Porvoo 2017 Reported by Futoshi Hirasawa