Helsinki / Porvoo 2017 Reported by RIE SAKUMA

2017年の定例研修先 フィンランド・ヘルシンキ&ポルヴォー。佐久間理恵のレポート。

STUDIO AALTO(アアルトのアトリエ)

ヘルシンキの中心地から4番トラムに乗って、郊外のムンッキニエミへ。1955年に建てられたアアルトのアトリエは、静かな住宅街の中にあります。 よく見ていないと気付かないほど、通りからの外観は周りの環境に溶け込んでいます。 ガイドツアーまで時間があったので、先に中庭の方に回り込んで散策しました。アアルトらしい曲線の外壁と階段状の中庭が印象的でした。 増築部分の食堂からガイドツアーがスタートし、製図室やミーティングスペース、アトリエなどを順番に紹介してくれます。 英語だったので少しでもわかる単語を聞き取ろうと必死でしたが、とても丁寧な説明だったように思います。

アアルトのデザインした家具や照明器具などが置かれ、建築だけにとどまらず幅広くデザインを手がけていたことが体感できる空間。 手前はパイミオチェア。アアルトの代表作である「パイミオのサナトリウム」のためにデザインされたアームチェア。 曲木の曲線が美しく、また、結核患者が楽に呼吸できるよう人間工学的な面も考慮されたデザインだそうです。

この空間はアアルトのアトリエとして、来客との打合せのほか、実験空間としても使われていたようです。 様々な照明器具が吊るされていたり、もっともアアルトらしい丸いトップライトがあったり。 階段右手の手すりのある壁はテーパー壁の実験だったようです。

スタッフたちのアトリエ/製図室は、光がふんだんに取り込まれ、とにかく明るいという印象を受ける空間。 遠近感を強調するために、奥に向かって先細りするような平面プランにしたという話は興味深かったです。 当時の製図道具なども残されていて、原始的とも言えるこの平行定規で図面を描いていたのかと感心してしまいました。

ミーティングスペースにはこちらにもアアルトお得意のトップライト。 このミーティングスペースでは、間接照明のような役割を果たしています。

食堂/キッチンは、赤いギンガムチェックのカーテンと、帆布の光天井が印象的でした。 柔らかな光が心地良い空間を作り出しています。 キッチンの窓から見える外の緑が気持ち良く、窓台のタイル貼りがアクセントになっています。

 

THE AALTO HOUSE(アアルト自邸)

アアルトのアトリエから歩いて10分ほどの場所で、こちらも周りとなじむような自然な佇まいの建物で、1936年に完成しました。 白いレンガとダークカラーの木板貼りの外壁は、夏の鮮やかな緑にもよく映えていましたが、雪景色を背景としても美しいだろうなと思いました。 自邸においても、家具や照明器具、細部に至るまで「アアルト・デザイン」が散りばめられていて、豪邸でなくとも豊かで温かな空間です。 アアルトがここで家族と生活をし、仕事をしていた姿をすぐ目の前に想像できるようで、もともと私の好きな建築家の1人ですが、 実際に暮らしていた家を体感することで、ますます親近感が湧きました。

リビング。スタジオを見学した時にも感じましたが、室内から見る外の景色の切り取り方が意識されていて、このリビングからも庭の緑を贅沢に楽しむことができました。 また、日本建築の影響も受けていたというアアルトは、この自邸にもその要素を取り入れています。 すだれのようなロールスクリーンや、ふすまのような木引戸は違和感なくインテリアとして取り入れられています。

2F家族のリビング。この写真、アアルト自邸でのお気に入りの一枚。 暖かく、優しい空気が充満しているような家族団らんの場でした。 あらゆるところにアアルトらしさが散りばめられた空間。

中庭側の外観は、リビングから見える緑の壁面は、ツタで覆われたスタジオの外壁です。 緑があってこそ、より魅力が生まれる外観だと思いました。

アトリエ内のアアルトのデスク。2面開口で自然に囲まれ、とても気持ちの良い見晴らしです。 まさに「特等席」という言葉がふさわしいスペース。

 

FINLANDIA TALO(フィンランディアホール)

アルヴァ・アアルトの設計で、1971年に完成したコンサートホール/会議場です。 プライベートイベントのため、外観の見学のみになってしまったのが残念でした。 いつかまた必ず、ゆっくり訪れたい場所の一つです。

KAMPIN KAPPELI(カンピ礼拝堂)

2012年に完成した、人々が心を休めるための礼拝堂で、フィンランドのK2S 設計事務所が設計しました。 木材が積み重なった特徴的な外観が、街中で存在感を発揮しています。 礼拝堂内部も木に包み込まれるような空間が広がっていますが、やはりこちらでも天窓からの光が優しく降り注いでいます。 アアルトの建築やこの建物に限らず、ヘルシンキの建築を見ていると冬の貴重な太陽光を最大限に生かすために、 自然光の取り込み方や光の使い方がよく意識されていることが感じられます。

KIASMA(国立現代美術館キアズマ)

アメリカの建築家スティーブン・ホールが設計コンペを勝ち取り、1998年に完成しました。 ヘルシンキの街の中では少し異質なようにも感じますが、この周辺に文化施設が集まっている環境を考えると、 現代美術館という役割を果たしている建築なのだと思います。 周りの広場や中のカフェは人が集うことを意識した空間のようでした。

 

PORVOO(ポルヴォー)

ヘルシンキから足を伸ばして、バスで1時間ほどのポルヴォー。 フィンランドでは2番目に古い街であり、旧市街を歩くとパステルトーンの可愛いらしい街並みや、 中世の面影そのまま、手作り感満載な建物を楽しむことができました。 もともと貿易の街として栄えた街で、川岸に建ち並んでいた赤い外壁の倉庫群はそのまま建物を残し、 今ではアンティークショップやカフェとして利用されています。

ポルヴォー大聖堂 街のシンボルとも言える大聖堂は どこを切り取っても可愛らしい外観で、 ポルヴォーの街の歴史を感じる建物でした。 良い意味で洗練されすぎず、 北欧のおおらかさがよく表れています。 ランダムに並べられた窓や、 手仕事の跡の残るディテールが印象的でした。

赤い倉庫群 ポルヴォーといえばこの景色。 この日は天気が悪く、思いのほか寒かったですが、 真夏だったらとても気持ちの良い水辺の景色を 楽しむことができたと思います。

ポルヴォー・カラーコレクション 外壁と窓枠、建具の色の組み合わせが様々で、 飽きることなく散策できます。

 

Helsinki / Porvoo 2017 Reported by Futoshi Hirasawa