板橋区立美術館で2020年1月13日まで開催の展覧会”小さなデザイン 駒形克巳展”を見に行ってきました。グラフィックデザイナー、造本作家としての顔を持つ駒形克巳さんの仕事を初めて知ったのが20年ほど前。ZUUCaのロゴやCOMME des GARCONSのタグチケット、インビテーションカードなどの一連の仕事でした。その後暫くしてから、たまたま手にとった絵本「ごぶごぶ ごぼごぼ」の作者が駒形克巳さんで、同一の作者だったことから、意識的に作品を拝見するようになりました。単純にファンなんですね。笑
展示は大きく三部構成。最初は、キャリア初期のアメリカでのグラフィックデザインの仕事のアーカイブを中心にスタディー、自主制作作品などで構成、当時のデザインしていた頃の心境などが解説されています。まだMacでのDTPが一般的でなかった時代ですから、手書きでのデザイン画。アーカイブの保存状態もよく、作品の全てが瑞々しく丁寧に描かれていて、この辺にも当時の心象が伺えます。
次に日本に戻られてからのグラフィックデザインの一連の仕事(ZUUCaのロゴやCOMME des GARCONSはこの時期)を現在に至るまで、ほぼ時系列に展示された構成。平面で観る部分と壁に展開してバーチカルに観る部分が意図的になっていて、特に色彩の豊かさ、構図の的確さのような、エッジと鮮やかさが印象に残る作品構成です。(この展示エリアは撮影NGでしたので会場の様子はこちらで)
三部構成の最後は、絵本や造本のお仕事とアーカイブ。ポップアップや折り紙&カットアウトを多用される駒形さんの造本の世界が一覧できます。全ての本に共通しているのは、紙の持つ効能をよく吟味したうえで、手間暇をかけ、一つ一つが丁寧に装丁されていることです。代表作、Little EyeシリーズやLittle Treeシリーズをはじめ、紙の色彩とテクスチャーがポップアップや折り紙&カットアウトのコラージュによって「行間の間」を想像させるような驚きがあり、見ていてとても楽しいです。また、身障者の方と一緒に取り組んだ作品「折ってひらいて』の製本の状態がわかる展示は「触る本」というテーマであり、身体性と向き合う姿勢がとても興味深かったです。イラストそのものが可愛らしいこともありますが、ポップアップは精巧に造られていて、この本に接した子供達にも凄さが伝わると思います。
三部構成の展示を巡ると、展示されていた一部の作品や駒形さんが手がけられた板橋区立美術館のミュージアムグッズが購入できる特設ミュージアムショップが隣接しています。
欲しかったLittle EyeとLittle Treeと図録は無事購入できましたが、ポスターは全滅(笑)。最終日に駆け込みで来た方が悪いのですが、造本(絵本)は書店で購入できないものが多いので、じっくり吟味されている方が多かったです。駒形さんご本人にサインと握手もしていただき、大満足(笑)。会社のアーカイブとして宝物にします。。
ちなみに「小さなデザイン」というタイトルは、駒形さんの造本作品のタイトルに小さいという言葉が使われていることからキュレーターである松岡希代子さんが名付けたそうですが、「駒形にとっての『小さい』ということには、モノとしてのサイズの小ささと、対象者と思いを共有するための、距離の近さ、世界の小ささ、というふたつの意味が含まれているようだ」とも図録で語られています。デザインは、内容にも仕事そのものにも言えるかもしれませんが、大きさや多寡だけで推し量ってはいけないし、身近なものこそ丁寧に向き合っていかないといけないということ。肝に銘じないと。。
会期:2019年11月23日(土・祝)~2020年1月13日(月・祝)
開館時間:9時30分~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(1月13日は祝日のため開館)、12月29日~1月3日
主催:板橋区立美術館
特別協力:ワンストローク
企画協力:ブルーシープ
■巡回情報(いずれも予定)
三菱地所アルティアム(福岡)2020年3月14日~5月10日
岩手県立美術館 2020年9月5日~11月3日
足利市立美術館 2020年11月14日~2021年1月10日
Katsumi Komagata, graphic designer and creator of books, is gathering attention around the world with his picture books such as “Little Eyes” and “Little Tree”. Komagata’s work is produced by focusing on each theme with the utmost care. The exhibition will consist of picture books, graphic design artwork and material that document his workshop activities. – ITABASHI ART MUSEUM –