建売住宅というクラシフィケーション vol.1

約9ヶ月関わっていた、企画住宅のプロジェクト「ウィルローズテラス石神井公園」が間もなく完成します。ただいま絶賛外構工事中(笑)。同じクライアントとともに開発した前作「ウィルローズヒルズ赤塚公園」は、14棟の集合する分譲住宅で、周辺環境からの街のあり方、この家を購入する居住者間のコミュニティの醸成をあり方を柱に計画。いわば「集」のデザイン。それに対し今回の「ウィルローズテラス石神井公園」は典型的な都市部に計画された9棟の分譲住宅の計画で、5つのコンセプト&プランニングで各々の棟を計画しています。元々、ハウスビルダーの商品化を前提としている事情もあり、明確な意志を持つプランニングで実施した訳ですが、「個」のデザインでありながら周辺環境との調和、そもそも住まいに対しての基本的な要請とは何か?根源的な事を考え、カタチにする、大変面白いプロジェクトでした。

 商品化住宅(企画分譲住宅)の難しいところは、計画の段階で「住み手」の顔が見えない事です。建築家が創る注文住宅はいわば「オートクチュール」で建築家が提案しながら、オーナーの主観とどう整合させられるか?もしくは建築家の個性を気に入ってオファーするかのいずれかで、時間を掛けて詰めて行くことができます。当然、住み手の個性や暮らし方に寄り添った、素晴らしい住まいが出来上がります。

それに対して建売住宅も含めた商品化住宅は「プレタポルテ」。洋服のサイズのように「どんな住み手でもそれなりにフィット」し、間取り優先志向で、それなりに価格帯で勝負して「ハウスビルダーが競合する環境の中でアピール」することを義務づけられています。その結果「何となくこれでいいか」みたい妥協の産物になってしまっています。売り手の都合で市場価値が決まっている世界です。でも、これではちょっと寂しい。

僕らが取り組んでいるウィルローズの分譲建売住宅は、クライアントの掲げるステートメント「「自分たちも住みたいと思えるか。」に共感して開発しているプロジェクトです。

建売住宅は「住み手の価値観」以上に「置かれている環境」に左右されます。

最近多い、高齢者の住み替えがいい例で「子供も独立したし、こんな部屋数の多い住まいではなくて、便利な立地で管理の楽な小さな家に住みたい」みたいな、家族の成長や置かれている状況に左右される事がほとんどです。そんな中で僕たちが考えた事は「住まいに求める基本的な価値観の整理」する事。ここからスタートして「日本人の住まいの歴史を考証」しながら「住み手の個性にそれなりに対応できる数種類のプランから選べる」状況を創る事。建築家の家や注文住宅には手が届かないけど、多様なライフスタイルにもついていける建売住宅。そんなイメージでした。

続きはvol.2へ