Designcafe-Blog | ブログ

Designcafe™ の主宰者、平澤太のブログです。デザイン考、ライフワーク、インサイト、旅行などを不定期に綴っています。

Designcafe Initiatives 2025

AdobeFireflyで生成した空間デザインスタジオのイメージAdobe Fireflyで生成したデザインスタジオのイメージ in NOTO

 

昨年、創業設立と法人設立の周年の節目を終え、次の5年、10年先に向けた新たな年度を迎えることができました。昨年年初に掲げた「環境領域におけるコミュニケーションデザインをベースとした空間ブランディング」の深度を追求しながら、空間ブランディングを通じて、持続性の伴う豊かな環境創造に貢献してまいります。

Designcafeでは、ポートフォリオを拡充させていくための働き方、Designing-Dxやワークフローも含めてさまざまな取り組みを加速させています。この流れの一環で2023年に北陸・金沢に自社物件によるデザイン拠点” HiDEOUTLab ” (ハイドアウトラボ)をオープンし、Designcafeが手がける空間ブランディングに不可欠になる生成AIやトポロジー解析、ジェネレーティブデザインの利活用を前提とした検証作業を進めてきましたが、去年後半からは、オファーを受けたプロジェクトへの実装も開始しました。環境デザインのフレームワークを革新するデジタルトランスフォーメーション = Designing-Dx をアップデートさせながら、マインドとデザインの可能性を追求して行く所存です。

昨年の元旦に発生した能登半島地震では、金沢のHiDEOUTLabも被災しましたが、幸い怪我人はなく、建物・機材等の損傷も軽微で仕事始めまでに復旧することができました。同時に地方での罹災時の復旧の難しさ、復興への意思統一の大変さを仕事を通じて間近に感じてきました。私たちができることは微力かもしれませんが、引き続き心を寄せていきたいと考えています。

Designing Dx3.0
テーマは「自律性、領域拡張、省力化」

Designing Dx = 環境デザインにおけるデザインコミュニケーションの円滑化とデザイナーのクリエイティブワークに集中できる仕組みづくり

Designcafe™️では、デザイナーがより高い創造性を発揮し、労働生産性を向上させるための環境として、次世代デザインワークフロー”Designing Dx”(デザインワークのデジタルトランスフォーメーション)を提唱・実践しています。2020年にフレームを策定、2022年から実践的に導入を開始し、プロモーション空間のデザイン(主に展示会)や店舗デザイン、ショールームのデザインに順次導入しています。 当初は、デザインワークにおけるデジタイゼーションとフィジカルの接点を見直し、断片的なワークフローをより横断的に、そして効率的なデザインワークを推進するために構築しました。 Designing Dxは上記の5つのデザイン・テクノロジー(DM =ダイレクトモデリング、RR = リアルタイムレンダリング、BIM= ビルディングインフォメーションモデリング、3DS= 3Dスキャニング、3DP= 3Dプリンティング)を状況に応じて使うことで、クライアントに対しての提案の迅速化やラピッドプロトタイピングを容易に行えるため、デザインプロジェクトにおけるデザインマネージメント(デザインの意思疎通)がスムーズにできるメリットがあります。> Designing Dx / Digital Twin 

Designing Dxの提唱・実装を経て3年、次のフェーズ「生成AI」の活用へ

Designcafe™️では、デザイナーがより高い創造性を発揮し、労働生産性を向上させるための環境として、次世代デザインワークフロー”Designing Dx”(デザインワークのデジタルトランスフォーメーション)を提唱・実践しています

スタートは、フィジカルデザインをデジタイゼーションで省力化させる事で、よりクリエイティブワークに集中できる仕組みづくり(=デザインワークにおける労働生産性の向上)という観点で取り組んできましたが、3年目の昨年からは生成AIの活用を加え、より多角的な視点でのデザインの取り組みを行っています。一つ目は、検討段階からパラメトリックなスタディ(Generative Study=ジェネレーティブ・スタディ*1)を行い、その検討内容からフィジカルデザインに取り掛かる手法です。

*1: Generative Study(ジェネレーティブ・スタディ):汎用的なビジュアライジングAIを活用したリサーチ方法。プロジェクトのアウトラインを伏せながら、特定のスクリプトをプロンプトし、目的とするデザイン表現の一般性や可能性をリサーチすること。

Generative Study(ジェネレーティブ・スタディ)の空間デザインの事例。特定のスクリプトと条件を入力し生成

Generative Study(ジェネレーティブ・スタディ)の空間デザインの事例。上記とは別な条件を入力し生成

空間デザインでは、クライアントとの初期検討の段階で、目的の空間に近い写真をピックアップし、共有するケース(コラージュもしくはムードボードなど)がありますが、これを生成AIで行いつつ、その可能性や表現性を事前にいくつも検討することで、よりユニークなデザインをフィジカルに取り組むことができます。汎用AIで生成されたデザインを「既に学習されているデザイン = 汎用性のあるデザイン」と捉えることもでき、同じ表現やディティールを回避することで、独創性(ユニーク)のあるデザインを生み出し易くします。

二つ目の取り組みとして、特定の定義(プロンプト)をChatGPT4.oを使ってPythonスクリプトとして生成し、3Dモデラーにコマンドラインを実行するような使い方(Generative Design = ジェネレーティブデザイン*2)も試験的に行っています。これは、デザインの領域拡張とも言うべき手法で、形状だけに限って言えば3Dモデラーや3D CADに実装されているトポロジー最適化*3 よりも取り組み易く、プログラム言語がわからなくても定義づけさえできればChatGPTがスクリプト生成してくれる為、スクリプトをコマンドラインにコピー&ペーストするだけでデザインのパターンを導き出すことができます。トポロジーについては最初のDesigning-Dxの立ち上げの際にも言及しましたが、生成AIを活用したデザイン検討は弊社に限らず、今後加速していくと思います。

Exhibition booth design with generative design.

空間定義をプロンプトし、Generative Design(ジェネレーティブデザイン)で生成した展示会のブースデザイン(習作)

Exhibition booth design with generative design.

上記と異なる設定でプロンプトし、Generative Design(ジェネレーティブデザイン)で生成した展示会のブースデザイン(習作)

Exhibition booth design with generative design.

上記と異なる設定でプロンプトし、Generative Design(ジェネレーティブデザイン)で生成した展示会のブースデザイン(習作)

*2: ジェネレーティブデザインとは、コンピューターと技術者が共同でデザインを行う技術で、AI(人工知能)が設計パラメーターに基づいて3Dモデルを生成する。未だ無いモノを作ることに向いており、複数案の回答が提示される。
*3: トポロジー最適化とは、設計で使える空間にどのように材料を配置すれば最適な構造となるのかを明らかにする解析。今あるモデルを最適化することに向いている。設計空間・荷重条件・拘束条件・制約条件を与え、所望の性能指標を最大化する材料の配置を計算を行う。設計空間モデルで想定される製品の使用環境やスペックに対して最適形状を見つけることができる。

3Dスキャニングによる空間測量&現場調査の省力化

3Dスキャニングによる空間ボリュームの測量の事例

空間3DスキャニングはLiDERカメラ+スキャニングアプリを利用して測量する方法(左)と専用のスキャニングカメラを使用し測量する方法(右)があり、建築や空間のボリュームに応じて使い分けをします(弊社使用事例)

Designing Dxの省力化の側面では、環境(空間)デザインにおける既存建築の3Dスキャニングの実装が進みました。これはiPhone/iPad Proに搭載されているLiDERBLKカメラを使って空間を3D点群データで撮像し、3D&BIMデータに変換&流用することで、人力での測量から建築図面を起こす手間を省くことができます。この技術が役立つ場面は、大きく3つあります。

  1. 建築図面を紛失している物件
  2. 検査済証(=建築確認申請図)の無い物件(1998年の建築基準法改正以前の物件)
  3. 人力での実測が難しい複雑な小屋組を持つ古民家のような建物

特に2については建築概要書と平面図以外は皆無のようなケースの場合、用途変更を伴う施設計画(住宅用途→宿泊施設、倉庫用途→物販店舗のような特殊建築用途)では、まず現況図面を準備しないと用途変更そのものが申請できない事態になります。既存の建築ストックを建築当初の用途から他用途に転用し、有効活用する流れは加速しており、一定の条件を満たした用途変更の規制緩和も進んでいることから、築30年以上の建築物の有効活用の流れは加速する*4と思われます。用途変更を伴うケースでは事前検討が必要であり、建築図を紛失しているケースや検査済証を取得していない物件でも、比較的短時間で3Dボリュームで実測でき、従来の人手による測量+建築図面化よりも低コストで図面化できる空間3Dスキャニングは、省力化の側面と相まって重要なテクノロジーになっていきます。そして、クライアント側のメリットは、プロトタイピングの迅速化による計画の検討が容易になることです。

*4: 建築基準法の改正により、2019年6月25日以降、200m2以下の特殊建築物の用途変更には建築確認の手続きが不要に。これは、空き家の活用や高齢化社会への対応を目的としています。

同時に3Dスキャニングによる建築&空間ボリュームの測量は、BIMや3Dでの計画ができないと宝の持ち腐れになります。建築や空間デザインの現場ではBIMの導入が遅れており*5、この技術そのものを受け入れられる仕組みがないと計画もできない為、Designcafeでは競争優位性の観点でも実装の中でノウハウの蓄積に努めています。

*5: 日本の建築業界のBIM導入率は30%程度。2020年統計。

 

 

 

建築、空間デザインのビュジュアライゼーションについての考察(学生向け)

ビュジュアライゼーションについての考察のきっかけ

Designcafeの平澤です。僕はDesigncafe™️と49Architektという空間デザインと建築デザインを手掛ける二つの会社、ダブルキャップでデザインの仕事とマネージメントを行なっていますが、空間と建築の現場ではデザインで取り扱う領域は異なるものの、この知見が特に学生の皆さんに役に立てばと思い、以前某紙面に寄稿した内容を大幅に加筆してまとめたものがこのエントリーです。

きっかけはリクルート時の学生エントリーで「デザインのビジュアライザーションに関して、学校によっては的外れな教育が結構まかり通っている」ことに気がつき、危惧したからです。これは指導する先生たちの知見が遅れているからなのか、わざとそうしないのかはわかりませんが(笑)、建築や空間はその内容の多寡はあるとしても大変な投資を伴うクライアントにとっては一大事業です。当然初期提案時からのわかりやすさ、計画の概要レベルで意思疎通するとなると、ビジュアライゼーションの精度は重要な要素になっていきます。また、労働集約型の職能という構造的に省力化しにくい「建築/空間デザイン、設計」という職業に対して、Dx(デジタルトランスフォーメーション)の観点を汲み入れ、創造的な仕事に時間とリソースを割いていくことの重要性は、中小規模で活動している僕たちのような会社では死活問題になります。

このような背景から、今回はビジュアライゼーションにまつわるテクニカルな部分に特化して基本的にデザインの現場で通用するスキルを前提に習得時に使用するコンピューターから、CAD、ビジュアライジングウェアを現在の世界の潮流と照らし合わせながら考察していきます。

Computer

空間や建築のビジュアライジングで使う前提の場合、OSは二択(WindowsもしくはMac)になりますが、学生で使うのであればWindows搭載マシンを薦めます。個人的にはMacを長年使っているのでMacを勧めたいのですが、Winを薦める理由としては、大きく4つあります。

  1. リリースされているほぼ全てのソフトが使用できる。昔と異なりMac専用のソフトが少ない。現時点でAppleシリコンになってからのMacに対応できていないソフトも多数。GPUレンダラーはWin対応がマストになっている。
  2. BIM(後述)やリアルタイムレンダリングなど、最近のソフトはGPUとメモリーに負担をかける為、ある程度ハイスペックにする必要がある。同じスペックであればWinの方が安価にカスタムセットできる。MacはBTO(Appleストアで購入できるセミカスタマイズモデル)ができてもハイスペックになるほどスタンダードモデルとの価格差が開き高価なので学生には負担が大きく不向き。Macは、どうしても使いたい人向け。
  3. WinのデスクトップであればGPUやメモリーなどを後々差し替えたり強化できる。Macはオンチップの為、後からのアップグレードが出来ず、冗長性が乏しい
  4. デスクトップ、ノートPCでの選択肢が多い。GPUやメモリーを強化したゲーミングPCといったジャンルもあり、自分の好みに合わせやすい。

使用するソフトの推奨動作スペックよりワンランク上のスペック(特にGPUとメモリーを強化する)を求めれば間違い無いと思います。これは学生期間中に使い倒すには、ソフトの冗長性(アップグレードやバージョンアップへの対応)が欲しいからで、4年間を1台で賄うのであれば先々を見通したモデルの購入が望ましいと考えるからです。また、クリエイターモデルをリリースし、BTOができる国産メーカーであれば安心感がある(修理や補償など)ので選択肢に入れると良いと思います。生協で購入も悪くありませんが、まともなスペックのものを販売していないという意見も耳にします。学生の場合、持ち運びを考慮しノートPCを選択するケースも多いかと思いますが、この場合15インチ以上のモニターであれば作業が快適です。具体的なメーカー&ショップは下記の通りで、目的を相談して選ぶと良いと思います。

▷マウスコンピューター(DAIV)
▷ドスパラ(Raytrek)

3DCAD / BIM

SketchUp for Web

建築であれ空間であれ、何かしらのCADを使うことになるかと思いますが、世界的な潮流はBIM(ビルディングインフォメーションモデリング)が主流であり、 デザインとエンジニアリングと建築資産管理が一元化する流れになってきています。現時点での導入率が低い日本でも人手不足からの省力化対応などから今後主流になるのは時間の問題です。これに伴って大学や専門学校でも履修をカリキュラムに入れているケースが増えており、今後を鑑みても避けて通れません。取得するのであれば3DCAD→BIMの流れが会得しやすく、空間設計や建築設計の現場ではデザインとその後の設計は求められる成果物のクオリティが異なることもあり(シーンで使い分けがあるため)分けて考えるべきです。

3DCADであればSketch UPが直感的で扱いやすく、世界的にユーザーが多いのでライブラリー(3Dのモデルデータや点景)も充実しています。ダイレクトモデリング(立体形状をCAD上で引っ張ったり押したりして形作っていく方法)というカテゴリーの3DCADで、インダストリー系3DCADでは当たり前に使われているテクノロジーが建築向けに開発されたCADです。学生向けの無料版はないですが教育機関向けのプログラムで安価に使用でき、スタディから高度なモデリングが簡単に描けるので大学の課題や修作でも使いやすいでしょう。実際にプロの現場でも活用しているケースが多く、建築設計事務所や大手内装設計会社でも使用者が多いので、就職後もツールとして使えます。またエクスポート後のレンダリングも対応しているソフトが多いため、好みのレンダラーを試せるメリットがあります(※Sketch UPはモデラーなのでレンダリングを別のソフトで行う必要がある)。習得のしやすさと導入の敷居が低い(Pro版でも年間数万円程度)ことがユーザー数を増大させた最大の要因だと考えます。

次にBIMですが、建築と空間で利用者が大きく異なり、中小の建築設計事務所はArchiCAD、大手設計事務所やゼネコン設計部はAutodeskのRevitを使用しているケースが多いようです。これは導入コストとバックボーンであるライブラリーの多寡で決まってくると思いますが、ArchiCADはBIM的な使い勝手を初期の頃から具現化しているパイオニアということもあり、意匠設計者向きでです。Revitは2Dでの表現がしづらい部分がありますがAutoCad(Autodesk)からの流れで膨大にあるライブラリーを流用し資産を活用したいケースに向いています。性能的な違いは細かくあり一概に比較できませんが、導入コストが一人当たり数十万円単位(ArchiCADで導入時コスト約80万円+年間保守が十数万円、Revitは導入時コストが無しで45万円/年)になる高価なソフトのため、導入に踏み切れず2DCAD(AutoCADやDraCADなど)で昔ながらのワークフローで業務を遂行している建築設計事務所も散見します。建築設計では特に構造設計や設備設計など、設計パートが分かれるためパート間の連携でのCADファイルの互換性も重要ですから、単に「好きなものを使いたい」だけでは済まされない事情もあるからです。最近の建築学科ではArchiCADを履修するケースも多く、履修のハードルが高いRevitが押され気味ですが、この二つのBIMソフトは前述のSketch UPからインポートすることができるので、3Dでのプランニングや意匠設計をSketch UP、基本設計から実施設計、設計管理はBIMへ移行するといった使い方もできます。学生の場合、ArchiCAD(教育機関プログラム)Revit(教育機関向け)は無料で使用できるのでBIMに親しんでおくことを強く勧めます。

空間設計の現場ではVectorworksがほぼ一人勝ちで、日本国内のインテリアや空間設計関連の企業ではデファクトスタンダードになっています。元々Mac専用CADとして成り立ちから3DCADへと発展、マルチOS化した経緯があり、一番安価な基本モジュールであるVectorworks Fundermental(汎用2D/3DCAD)でもモデリングからレンダリングまでオールインワンで使うことができます。VectorworksでのBIMは「Vectorworks Architect」「Design Suite」という二つの上位ラインナップで実装されており、シンボルデータに品番とスペックが内包されていれば仕上表や仕様書にも修正データが自動で反映できるといったBIMの最もシンプルな使いかたが簡単にできます。ArchiCAD / Revit同様にSketch UPからインポートも可能なので、Sketch UPとVectorworksがあれば、プレゼンテーションのフォーマットからレンダリングまで全て賄うことができます。Vectorworksの良いところはBIMとしても使える割に導入コストが比較的安価(とは言っても初期費用50万円弱で年間保守アップグレードサービスで12万円/年程度)な事、2Dでも3Dでも割と自由な使い方ができ、プレゼン、ビジュアライゼーションの機能が充実していることからアトリエ系の建築デザイン事務所でも多く使われています。学生の場合、無償版がないので学生向けの単年度版を購入する形になります。※(追記)→2024年から学生教職員向けのライセンスが変わり無償で提供されるようになりました。詳しくはこちらで。

BIMに関しては、上記で紹介した3つのBIMソフトの特性を把握した上で将来目指したい設計事務所やデザイン会社で使われているものをチョイスすると言った感じでも良いと思います。ちなみに僕の会社ではArchiCAD(49Architekt)とVectorworks Architect(Designcafe™️)をBIMとして使っています。

HCJ ホテルレストランショーに出展するDesigncafe

Realtime Redering (リアルタイムレンダリング)

Realtime Redering (リアルタイムレンダリング)は、ここ数年の建築&空間デザインの潮流の中で急速に広まっているビジュアライゼーションの手法の一つです。Sketch UPArchiCADRevitVectorworksで制作したモデルデータをより直感的に短時間で添景をセットし、レンダリングを行っていくことができ、ウオークスルーもVRやARも対応しているためより没入感のあるビジュアルを比較的簡単に作ることができます。ArchiCADRevitVectorworksではそのまま統合されているレンダラーでレンダリングすることが可能ですが、添景を補完したりよりリッチな表現を求める場面でも使用されます。建築や空間を学ぶ上で、その建築や空間の目的や計画の背景、または場所性などをデザインやサイトプランニングとして紡ぎたいといったエレメントがありますが、リアルタイムレンダリングは、風景をクリエイトできるので使っていても楽しいと思います。代表的なソフトとしては下記の通りで、学生の場合無償で利用することができるため、習得を強く薦めます。

LUMION(Act3D-B.V.オランダ)学生/教育版(無償

ENSCAPE(Enscape GmbH.ドイツ)学生/教育機関向け(無償)

Twinmotion(Epic Games.アメリカ)教育版(無償)
The Stand "Designcafe-Food Stall" 屋台、テイクアウトスタンドのデザインシリーズ

LUMIONとENSCAPEは、建築ビジュアライゼーション向けのリアルタイムレンダラーとして先行しており、TwinmotionはEpicGamesが開発、Unreal Engineを搭載している後発レンダラーです。Macの場合、この中ではTwinmotionでほぼ一択(2022年現在)になりますが、個人的にトライアルした感じでは、パスの操作や添景レイアウトが操作しやすいLUMIONとTwimotionが使いやすく、ENSCAPEはパラメトリック(数値入力箇所)が入るので操作感としては少し使いにくい印象でした。ちなみに僕の会社ではLUMION(49Architekt)とTwimotion(Designcafe™️)をリアルタイムレンダラーとして使っています。

Pre Redering(プレレンダリング)

3DCADからそのままフォトリアルなCGを作成したい手法として、プレレンダリングがあり、CADのプラグインとして数多くリリースされています。これもリアルタイムレンダリング同様、3DCADのレンダリング機能を補完する役割を持っていますが、SketchUPのような3Dモデラーのレンダラーとして活用することができるため、セットで使用するケースも散見します。また、レゾナンス的にプレレンダリングの方がリアルタイムレンダリングよりも優れている部分があり、ビュアライズの表現としてどうしたいのかで棲み分けしていくのが良いと思います。下記で紹介するV-Rayはデザインの現場でもよくつかわれているプリレンダラーです。

V-Ray for SketchUP

ビジュアライゼーションソフトのタイトルは数多くリリースされており、その多くは学生無償版を提供しています。今回考察した内容は、個人的にトライアルしたものにとどめましたが、デザインの現場でどのように使われているのかを学生の皆さんに知ってもらいたく、その観点で考察しました。次回はBIM  / CIMといった施工の現場でも進んでいるテクノロジーについて考察してみたいと思います。

 

3D Printer / Designing Dx for Spatial

Designcafe™️では、2019年から環境デザイン領域におけるDx(デジタルトランスフォーメーション)の一環としてデザインワークフローの見直しを検討してきました。これまで使ってきたツールやデザインワークそのものの進め方を一旦見直し、より生産性の高いデザインワークが可能になるツールやクラウドをトライアルを行い、洞察する時間や創造性に時間を割きたい為です。そして、これらを加速させたのはいうまでもなく、2020年初頭から猛威を振るう新型コロナウイルス感染症でした。

これらの状況を鑑みつつ、デザインワークにおける生産的ワークフローを実現するため、これまで使ってきたデザインツールやクラウドを取捨選択し、新たなツールを追加導入して体系化したものが、Designcafe™️が標榜する”Designing Dx for Spatial”です。

この中で、重要視しているのは一つのデザインデータを出戻りなく活用し、プロトタイピング(モックアップやAR)リアルタイムレンダリング、BIMに繋げ、高い互換性を持たせることで、デザインワークにおけるオペレーション・リードタイムを劇的に省力化させることを目的にしています。その中で主にモックアップを作成、デザインの検討で期待しているのが3Dプリンターです。

今回導入したものはFDM方式(Fused Deposition Modeling = 熱溶解積層方式)のパーソナル3Dプリンターで熱可塑性樹脂を熱で溶融し、ノズルから吐出して層を形成し、その繰り返しで一層ずつ積み重ねて造形する3Dプリンターにおける造形方式です。様々な造形方式が開発されている3Dプリンターですが、この方式を選んだのは、建設の現場で採用されている3Dプリンターはほぼ全て積層による造形方式を採用しているからです。これは、単にモックアップ用として活用するだけでなく、将来的に建築や空間の工事現場に導入されてくる3Dプリンターの知見を得る意味でも、ベースとなる3Dデータの形式特性を理解する意味でも重要になってきます。

現在、空間や建築のモックアップはスチレンボードやプラ板を使うことが多いですが、ラウンド形状が作りづらく、三次曲線になると職人的な技術を持ち得ていないとほぼ不可能でした。これが3Dプリンターであれば三次元のラウンド形状でも3Dデータさえあればそのまま印刷できるため、モックアップ制作の省力化が可能になります。

今秋から本格的に使い始め、既にいくつかのプロジェクトでCGやVRとともにモックアップでの検討&プレゼンテーションを行なっています。ダイレクトモデリングからスライスして3Dプリンターでモックアップ印刷をしている間に、同じモデリングデータをベースにリアルタイムレンダリングでプレゼンテーションの成果物を作成するといったことが短時間で準備できます。

ダイレクトモデリングでの3D検討は、ARや3Dプリントなど可視化する手段を飛躍させましたが、依頼されるプロジェクトは年々多様化しており、プロジェクトの特性に合わせてプレゼンテーションツールを使い分ける必要性が高まっています。また、プロモーション空間におけるプロジェクトの殆どがプレリリース前であるためNDAの見解からも内製化させることが望ましく、これら一連のDesigning Dx の概念は時代に即していると自負しています。

印刷できる素材が選べる一つ上のランクの3Dプリンターの導入も検討しており、次世代3Dプリンター展にも足を運ぶ予定です。