今年も東京モーターショーへ、事務所のメンバーで行ってきました。
Designcafeでエキシビションのスタンドデザインを手がけるようになってから、特に意識して行っている東京モーターショーですが、今年は前回以上にエコカーが百花繚乱といった感じで、環境共生や環境配慮に則った車が数多く出展していました。 モーターショーは(ご存知の方も多いと思いますが)その国のメーカーが世界に先駆けて発表する(ワールドプレミア)が目玉で、今回の東京では国産車各社が目玉となる新車をリリースしています。
その中で、各社のスタンドデザインは、そのブランドを象徴する大切な要素であるので、各社気合いを入れて(笑)色々仕掛けてきます。ここ数回のモーターショーの傾向としては、CM連動型(CMや広告の知名度を生かして、ストーリー性のある展示がメインでTOYOTAやHONDAなど主に国内メーカーが実践)かプロダクト・ブランド訴求型(所謂従来の展示でブランドアイデンティティやプロダクトバリューを訴求する直球の展示で、主に欧州メーカーが実践)の大きく二つに別れます。 来場者の関心はあくまでも車なので、展示車をどう魅力的に訴求していくか?ということであれば前者も後者も差がないと思いますが、印象として強く残るのは前者、ブランドの品格を感じるのは後者といった感じでしょうか。
個人的にCM連動型ブースで印象に残ったのはHONDA。
「枠にはまるな。」という今期のステートメントに則った、シンプルな会場構成にメッセージを散りばめたスタンドデザインを展開。国産車の中でも現実的にリリースされそうな2台のミッドシップ「S660 CONCEPT」と「NSX CONCEPT」がステージ上でメイン展示されており、12月に発売されるヴェゼルなど、見所満載。
本田技研工業という社名には、自動車の文字も、2輪車の文字もなくさまざまなものを作り出す意味が込められていますが、今回のモーターショーでは4輪車、2輪車、汎用機、ロボットなどを展示しており、ステートメントをそのままに“枠にはまるな。”というメッセージを強く訴えかけています。ショータイムで流される映像もHONDAが町工場から2本のスパナでスタートした事を想起される映像で、2個のナット(二輪)が街に飛び出し、タイヤのごとく疾走しながら、次第に4個(四輪)、最後はジェット機へ昇華していきます。この映像はとても素晴らしくて、しばらく見入ってしまいました。コピーといい映像のデフォルメの仕方といいHONDAは上手いですね。
スタンドデザインとしては、突出した見所はありませんが、自社をどう上手く来場者に伝え、訴えかけていくか?という視点ではとても機能していたブースデザインだと思います。
東京モーターショー2013 HONDA stand
プロダクト・ブランド訴求型ブースで印象に残ったのはAUDIとVWとスバル。
AUDIとVWについては、毎回期待を裏切らないというか(笑)スタンドデザインも見せ方も上手く、世界中を廻るモーターショーで統一したブランドイメージを訴求しています。欧州メーカーは、ユーザーとの距離感を少し持たせる・・間を取るようなスタンドデザインが多いですが、今回の2社は点在させながらユーザーフレンドリーに導線されていて好感が持てました。特にVWは、TOYOTAと並ぶ全カテゴリーの多様な車種を持つメーカーですから、特に必要としていたのかもしれません。TOYOTAがCMをそのまま会場に持ち込んでいったやり方と対局を成しますね。
東京モーターショー2013 AUDI stand
東京モーターショー2013 VW stand
個人的にはSUBARUのスタンドデザインも印象に残りました。 世界の名だたる自動車メーカーが軒を連ねるので、派手な側面に目が行きがちですけど(笑)、シンプルながらも巧妙にプランニングされた配置・・バックウオール前のLEVORGの見せ方など、裏手に廻らないと見えない(見せない?)手法は、東京では目新しいし提案する上でも勇気が居るのではないかと(笑)。SUBARUは他の乗用車メーカーに比べて車種が少ない事もありますが、ブランドカラーのブルーとLEVORGのカラーがスタンドケーシングのホワイトとよくマッチしていて素敵でした。前回もスバルのスタンドデザインはとても良かったのですが、今回も感銘を受けました。
東京モーターショー2013 SUBARU stand
東京モーターショーは回を追うごとにECOを訴求した環境指向のモーターショー(他の都市で開催されるモーターショーとの棲み分けもありますが・・)になっており、今回も日本ならではのハイエンドテクノロジーを各社競いながら、「日本ブランドの訴求」を最重要テーマとして据えています。近年の自動車テクノロジーは、日本とドイツが牽引してることを考えると、ずれてはいません。 同時にアメリカメーカーの不在、日本マーケットの縮小からくるイベントとしての祝祭感は寂しい感じで、主催者側の想いと来場者の意識が乖離しているのかなと思いました。 イベントは想いと志と同じ位、モノが売れていないと厳しいということなのでしょうね。