ニッチな高架下施設。mAAch ecute (マーチ・エキュート)

昨年完成した mAAch ecute 神田万世橋 (マーチ・エキュート)に行ってきました。完成時に行きたかったのです、繁忙期で逃してしまい2月にようやく行くことができました。近いのに・・mAAch ecuteは、かつて中央線神田~御茶ノ水間に存在し、31年間利用された旧万世橋駅の階段やプラットホームといった遺構を生かし、JR東日本、JR東日本ステーションリテイリング、東日本鉄道文化財団が再開発した全11ショップからなる商業施設です。遺構と商業施設(といってもかなりコンパクトな施設ですが)のコンプレックスというアイデアが面白く、完成当時はかなり注目を集めましたよね。

階段やプラットホームといった遺構が見学できるように「再生」されており、施設と商業エリアが一体化しているのが特徴な訳ですが、中に展開しているショップも食を中心としながらも生活雑貨や地方の名産品も売られておりかなり異色である事は間違いありません。以下関係者概要説明の引用ですが

「マーチエキュート神田万世橋」は、中央線神田~御茶ノ水間の旧万世橋駅遺構と一体化した商業施設。内覧会では、JR東日本ステーションリテイリング代表取締役社長、三井剛氏が施設概要を説明した。「9月14日、かつて旧万世橋駅、その後の交通博物館があったこの地、神田須田町に、『マーチエキュート神田万世橋』が『再生』します」と三井氏。万世橋駅開業から100年にわたる歴史・文化を大事にし、残された遺構を最大限に活用した施設として「再生」させたいとの思いがあるという。 同施設の開発コンセプトは「万世橋駅サロン」。鉄道遺構の魅力を生かしつつ、神田川に面した「ノースコリドー」、JR神田万世橋ビルに面した「サウスコリドー」に、趣味性・嗜好性の高い常設ショップと期間限定ショップがそろう。「100年前からの歴史的価値と、これから提供する新しい価値が融合した、唯一無二のサロンになってほしい」と三井氏は述べた。
神田の旧万世橋駅”再生”、9/14開業「マーチエキュート神田万世橋」 | マイナビニュース

かなり意欲的な部分が窺い知れます。実際JR系の開発会社は意欲的な開発を行っています。エキナカの概念を作ったecute然り、アルチザン=職人の街として栄えてきた秋葉原ー御徒町エリアに工房を併設したショップやものづくりの体験が出来る”情報の集積場”としての機能を持たせた2k540 AKI-OKA ARTISANも然り、中央線阿佐ヶ谷駅から高円寺駅にかけての高架下開発でアニメーション制作会社が多い杉並区という“アニメを生む街”の土地柄を活かしたスポットとして計画された阿佐ヶ谷アニメストリート然り、その豊富な鉄道施設のストック(高架下やエキナカのような遊休してた空間)を活用する開発が目立ってきました。 ただ、近年の特徴はその活用する目的が非常にニッチになってきている事。

主に倉庫や駐車場として利用され、殺風景な印象もある鉄道高架下の再開発が進んでいる。地域の特性を生かしてアニメ関連や工芸品の専門店街を展開したり、スポーツジムを設けたりと多様だ。鉄道各社は魅力的な空間に変身させることで、駅ナカ(駅構内の商業施設)のような集客効果を狙っている。・・・これまで駅チカ(駅の地下街)や駅ナカの飲食施設などの充実に力を入れていたが、「高架下の積極活用や暗いイメージの払拭にまでは気が回らず、後回しになっていた」(業界関係者)

まあ、わかり易いですよね。高架下を駐車場などの不動産的な価値として捉えるよりも、特定的で副次的な産物(賑わいや物流)を生み出した方が、鉄道会社にとっても遥かに効率的でベネフィットがありますから。今のところこのニッチな施設への流れは都心に限られている様ですが、高架下の利用で最も多い「駐車場」と「レンタル納戸」の稼働率(平均15%と言われている)を鑑みると、まだまだ加速しそうです。私鉄各社も身を乗り出して開発していますし、ローカライズされた魅力のある商業施設・文化施設・スポーツ施設に転用出来れば新築で一から創るよりも遥かに低いコストで創る事ができます(構造体の下に建造するので雨仕舞いの簡素化が期待出来る)し、開発余地が大きいですね。