平澤太

Designcafe™ の主宰者、平澤太のブログです。デザイン考、ライフワーク、インサイト、旅行などを不定期に綴っています。

Singapore 2013 Vol.6 ボート・キー&チャイナタウン

ボート・キー(Boat Quay)は、ラッフルズプレイスの程近くにある波止場の名残で、現在はレストランやバーなどの一大スポットになっています。キー quayとは波止場の意味。シンガポール独立当初のボート・キーは、不法滞留者のジャンク船が並び、不衛生で随分と荒んでいた様ですが、独立後の護岸整備と拡幅で今の景観が完成し至ります。その後、昔からあった周辺の建物をリノベーションしたレストランやバーが出現し、対岸のエンプレス・プレイスのコロニアル建築群のナイトビューの効果と相まって、人気のエリアになった訳です。

中心部のニュー・ブリッジ・ロード、サウス・ブリッジ・ロード周辺が伝統的にチャイナタウンと呼ばれており、マリーナ・ベイからも近い位置にあります。Vol.5で既出のピナクル@ダクストンもこの近く。(マレーシアの華僑政権が分離独立したいきさつもあり、国全体がチャイナタウンとも言えますが。笑)シンガポールのチャイナタウンは、ロケーションも利便性も他の民族と比べて便利です。コロニアル風の住居が軒を連ねていますが、中は1階にお店、二階に住まいとなっていて中国の様式を色濃く影響された造りになっています。

チャイナタウンのお楽しみはなんと行っても食事。 男女問わず忙しく働いている人が多いシンガポールの人々は、外食が中心。ホーカーズが充実していて、格安で食事が出来ます。こういうローカルフードに舌鼓を打つのが海外のチャイナタウンの楽しみの一つですね。

文:平澤太、撮影:平澤太・佐久間理恵

Singapore 2013 Reported by Futoshi Hirasawa
Singapore 2013 Vol.1 マーリーナベイ・サンズ
Singapore 2013 Vol.2 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
Singapore 2013 Vol.3 サザンリッジス
Singapore 2013 Vol.4 VIVO CITY
Singapore 2013 Vol.5 ピナクル@ダクストン
Singapore 2013 Vol.6 ボート・キー&チャイナタウン
Singapore 2013 Vol.7 オーチャードロード

 

Singapore 2013 Vol.5 ピナクル@ダクストン

シンガポールでは、ホームオーナーシップ制度という「国民に自分の家を持たせる」事を国策として進めていますが、国民の82%が住宅開発局(HDB)の供給するアパートメントに居住しています。そしてその結果、国民の93%が自分の持ち家を持つまでに至っています。 この中心的な役割を担っているのがHDBの手がけるアパート郡で、この最新事例の一つがピナクル@ダクストン(Pinnacle@Duxton)です。マスタープランと基本設計は国際コンペで選出されたシンガポールの若手建築設計事務所 ARC-Studio Architecture

ピナクル@ダクストンは、チャイナタウンのほど近くのアクセス抜群のエリアにあって、マリーナベイからも車で5分程度。50階建てのタワーが26階と50階のデッキで繋がっているユニークな構造です。26階のスカイブリッジと屋上のスカイガーデンは住民は自由に出入りでき、外来者は一日200名限定で入場できるようになっています。これだけの高さを誇る公共住宅はシンガポールでもまだ少ないようですが、高密度の住環境をいかに快適に住う為に沢山のアイデアがちりばめられていて、シンガポールのお家芸でもある屋上庭園(スカイガーデン)はもちろん、多棟展開に拠って景観をリズミカルにし、自然換気と自然光の効率を高める事で高湿の環境下でも快適に過ごせるように配慮されています。26階のスカイブリッジにはジョギングトラックまで敷設されている充実ぶりです。笑

近年のHDBの手がけるアパートメントは、多様を極めていて幾つものブロックプラン(間取り)を丁寧に検討し、そのブロックプランの組み合わせを建築設計と環境設計にフィードバックさせています。元々が移民の国で、コラボレーションに長けたシンガポールの人々ならではの発想です。このピナクル@ダクストンは最新事例のHDBですが、造りは至って質素で華美な高級感とかは皆無。政府が主導しているプロジェクトですから、主観は「多民族で移民」の人々が「快適に暮らせる」事の一本に集約されています。多様な価値感を受け入れつつ、自分の家を持つ事で好ましい職業倫理が形成され、建物や自分たちの住む界隈を大切に思う気持ちが芽生えるように配慮されているわけです。

倫理観の醸成を第一に置き、法体系とフィナンシャル制度を確立し、結婚すれば賃貸よりも簡単に自分の持ち家が持てる仕組み。そしてそのアパートは世界中の知見を集めつつ、HDBの高密度住宅のノウハウを集約して設計する訳ですから、建築的にも魅力のある景観が生み出されます。高密度な集合住宅では「周辺のコミュニティの醸成」も大切ですが、その前に「個の倫理観の醸成」の方が多民族国家では重要なのでしょうね。

文:平澤太、撮影:平澤太・佐久間理恵

Singapore 2013 Reported by Futoshi Hirasawa
Singapore 2013 Vol.1 マーリーナベイ・サンズ
Singapore 2013 Vol.2 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
Singapore 2013 Vol.3 サザンリッジス
Singapore 2013 Vol.4 VIVO CITY
Singapore 2013 Vol.5 ピナクル@ダクストン
Singapore 2013 Vol.6 ボート・キー&チャイナタウン
Singapore 2013 Vol.7 オーチャードロード

 

Singapore 2013 Vol.4 VIVO CITY

ハーバーフロントに建つシンガポール最大のショッピングセンターがビボ・シティ(VIVO City)。セントーサ島の出入り口にあたりますが、ハーバーフロント計画の目玉として、また地元の人が普段使いのショッピングセンターとして建設されたもので、基本計画と基本設計は伊東豊雄建築設計事務所で施工は五洋建設が担当しています。

ビボ・シティのユニークなところは、施設の屋上に屋上湖などを擁するスカイガーデンを設置し、海側を開放的なテラスを設ける事で、ショッピング以外の目的にも耐えうる施設になっている事です。また、幹線道路側の壁面の意匠はフィーチャー・ウォールと呼ばれる奔放な三次曲線で構成されていて、この時期の伊藤建築を準えたような外観を有します。この二つの機能とデザインが最大の特徴ですが、テナントの構成も面白く、昔の露店街を再現したカフェテラスがあったり、衣食遊のスペシャリティストアを低層階に集約していたりとてもユニークです。

ちなみに基本設計時のコンセプトは波をメタファーとした「サーフィン」で、このサーフィンを具現化したカタチがフィーチャー・ウォール。このフィーチャー・ウォール、デザインはともかく施工の精度の問題なのか、全体としてハリボテに見えてしまって少し残念でした。商業施設としては破天荒な印象が強いですが、ファシリティの構成は巧妙で、一日いても楽しめるように工夫されています。

 文:平澤太、撮影:平澤太・佐久間理恵

Singapore 2013 Reported by Futoshi Hirasawa
Singapore 2013 Vol.1 マーリーナベイ・サンズ
Singapore 2013 Vol.2 ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ
Singapore 2013 Vol.3 サザンリッジス
Singapore 2013 Vol.4 VIVO CITY
Singapore 2013 Vol.5 ピナクル@ダクストン
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Singapore 2013 Vol.7 オーチャードロード