Designcafe-Blog | ブログ

Designcafe™ の主宰者、平澤太のブログです。デザイン考、ライフワーク、インサイト、旅行などを不定期に綴っています。

Seoul 2016 Vol.04|동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ : DDP)

ザハ・ハディドが設計した、동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)

仁寺洞から明洞を経由して向かったのは、先日惜しくも他界したザハ・ハディド(wiki)が設計した、동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ : Dongdaemun Design Plaza = DDP)。敷地面積62,957平方メートル、建物面積25,008平方メートル、延面積85,320平方メートルに及ぶ広大なスペースは、大型イベントが開催できる「アートホール」、韓国デザインと世界トレンドを発信する「ミュージアム」、デザインビジネスの拠点となる「デザインラボ」、文化体験やショッピングが楽しめる「デザインマーケット」李朝時代に城壁があったことを記憶する「東大門歴史文化公園」の5施設からなります。紆余曲折を経て2014年に完成。脱構築主義建築(Deconstruction)の旗手として、また東京オリンピックの新国立競技場の一連の計画によって日本でも有名ですね。ザハが計画し提示した新国立競技場に関しては、個人的な意見は慎みますが、一昨年前にDesigncafeの研修旅行で訪れた香港理工大学ジョッキー・クラブ・イノベーション・タワーに続いて二作目のザハ建築訪問でしたので、近作比較も含めて所見を。

동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)乙支路側からのビュー


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)グランドフロアー。ブリッジからのビュー


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ブリッジの別アングルから


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ブリッジからの覗く。アンダーグランド。


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)反対側のアングル。見事に同じ風景が現れない。笑


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)のファサードライン。三次元のアルミパネルによるダブルスキン(二枚幕)構造


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ブリッジのトンネル部。右がデザインショップが入るショップ棟、左がデザインセンターに区分け


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)発見された遺跡を避けるように保存されている


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)トンネルをくぐる


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)インディペンデンス・デイで宇宙船が下りて来た時のイメージにそっくり。笑

東大門デザインプラザの地は、かつて球場やサッカー競技場などで構成された東大門運動場があり撤去移転させた後、約5年の歳月と400億円の莫大な費用が投じられ2014年に完成。先立って2009年にオープンした隣接の「東大門歴史文化公園(トンデムンヨッサムナコンウォン)」とともに、アート・デザインに触れられる観光名所として生まれ変わっています。東大門市場で賑わった地が、デザインとアート、ヘリテージを担う拠点に生まれ変わった訳です。

東大門市場が衣装関係の巨大卸売市場(日本からのバイヤーも買い付けに来ています)であることから、東大門をデザイン関係の中心地にするために計画された東大門デザインプラザ。略称として使われるDDPは、東大門デザインプラザ(Dongadaemun Disign Plaza)の英語の頭文字をとったものですが、さらにドリームDreamのD、デザインDesignのD、プレイPlayのPを隠語しています。建築としては3つの巨大な流線型のボリュームが分離せずにシームレスに融合し宇宙船の様な個性的な外観です。中心となるのは国際フォーラムや制作発表会、ファッションショーなどのイベントが開催されるアートホールと、定期的に内容が変わる博物館。アートとデザインが触れ合う場所となることを意識しています。

동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)文化体験やショッピングが楽しめる「デザインマーケット」


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)展示室の入り口


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)デザインマーケットからラボへの導線


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ラボの入り口


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ラボ入り口のフロアサイン


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ラボ入り口脇にあった消火栓。壁面と同じ仕上。笑


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ラボ内部。コラボレーションしやすい造り


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ラボの壁面。


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)デザインマーケット


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)デザインマーケットのコリドー。うねっているので居場所が解りにくい。笑


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)トイレの導線


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)企画展示室


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)企画展示室

デザインマーケットは、その名の通り市場の様な様相で、その廻りにユニークなプロダクトを扱うメーカーが直営しているショップがコリドー状に配置されています。見学当日は、デザインマーケットでの買い物に時間を費やしてしまい(笑)、ミュージアムの見学が時間切れになってしまったのですが、マーケットからのラボへの導線、展示室へのアクティビティはユニークで、脚を運びたくなる(故に迷う。笑)つくりです。賛否両論分かれる所ですが、個人的にはこれはこれでありかと。クリエイティビティーを啓蒙し、デザインとマーケットを繋ぐ役割を担っている以上、このくらいのユニークさは必要だと思います。

동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)デザインラボの外部入り口。恣意的な入り口が多く、回遊を促すプランニング


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)公園側


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ブリッジ公園側から


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)敷地内のキオスク


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ブリッジ公園側の近景

アンダーグランドエリアはRC造、外壁はS造に3Dアルミパネルによるダブルスキン構造。内側の窓に合わせてパンチング状に打ち抜かれたアルミパネルが配列されていて、採光が取れるようになっています。また夜は、この窓の灯りが外に漏れ幻想的な風景を創り出します。アルミパネルの精度も納まりも美しく、雑な印象を受けた香港のイノベーションセンターに比べると、施工の精度がこの建築の魅力を引き出している一要素である事を改めて感じます。

동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)外壁の3D アルミパネル


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)外壁の3D アルミパネル。パンチングとフラットパネルの対比


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)公園側からアンダーグランドへ続くスロープ


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ブリッッジトンネルの近景


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ブリッジをアンダーグランドから眺める


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)アンダーグラウンドから眺める


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)アンダーグランドからブリッジを眺める


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)遺跡エリア

この東大門デザインプラザ、建設途中に重要文化財級の遺跡が発掘された事もあり、その遺跡の保存形態やそれに伴う設計変更を幾度となく重ねた事もあり、新国立競技場同様批判にさらされています。また、デコンストラクションの「コンテクスト無視(その土地の持つ歴史や文化的な背景を無視する事)」も批判対象に。デコンストラクションはコンテクストを無視しても、モダニズム建築が辿ってしまった退屈な形態から逸脱する事に主旨を置くのですが、この辺は建築の歴史を知らないとなかなか理解されにくいのかもしれません。むしろコンテクストに主旨を置くのであれば、それを与件のプライオリティーとして先に掲げた上で、論評するべきです。

これに対してのザハの回答が新聞の記事になっていました。そのまま引用すると・・

DDPがあまりに大きすぎるのではないかとの質問に、「何を基準に大きすぎると言うのか、こちらから質問したい。スケールは建築家に与えられた要件です。DDPのように機能が特化した建物を設計するときは、厨房や台所、寝室みたいに減らせるもんじゃないんです。箱型の建築物にしたらもっと大きくなっていたでしょう」周辺のコンテクスト(脈絡)を受け入れられなかったという批判には、「DDPのような文化プロジェクトでは、都市の脈絡を再考して新たなアイデアとして始めることが重要だ。周辺の環境も重要だが『新鮮さ』『新しさ』を考えるしかない」。ステレオタイプ(固定観念)が死ぬほど嫌い、10歳からわざわざ変な服だけ選んで着ていたという彼女らしい答えだった。(朝鮮日報「東大門デザインプラザは、幼い頃から遊んでいた非対称の鏡が動機に」より 2014/03/12 03:40)

「建築という、土地との結合という意味で、展示場を地形に溶かそうと努力した」「DDPは、規模と構造の面で、建築自体が地形になった」と自負した。「建物の土地がもともと、東大門運動場だったことは知っていた」として、その歴史を保存するために、照明灯を残したとも説明した。また、建築の過程で見つかった城跡や1900年代の水門施設も「建物に溶かした」といい、「石造りやコンクリート、金属の材質が自然な調和をなした」という。(ハンギョレ「東大門デザインプラザがぶっ飛んでるって?」より 2014/03/12 11:09)

非常にザハらしい回答かなと(笑)ザハを起用したいのか、コンテクストを優先させたいのか?この辺の曖昧さがこの新聞の論評でも窺い知れますね。

동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)地下鉄駅へと続く飲食エリア


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ジョイント部分


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ミュージアム棟


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)ミュージアム棟レセプション棟


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)レセプションカウンター近景


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)レセプション。コーリアンによるシームレスで美しいカウンター。


동대문디자인플라자 見る角度で見事に異なります。


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)自動ドア部分


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)自動ドアも斜め。笑


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)


동대문디자인플라자(東大門デザインプラザ)アンダーグランドからブリッジを見上げる

ファッションビル側の地下にあるスペース。地下鉄駅からも近く、ファッションビルの前への地下道にも直結してます。こちらにはコンビニや飲食店、コスメや洋服屋さんなどがあり、このパブリック空間デザインもザハの手によります。三線直結する東大門歴史文化公園駅からファッションビルのミリオレとグッドモーニングシティへのアクセスのハブとしても機能していて、単なるデザイン施設としてのみならず、公共施設としての役割も担っています。

批判にさらされつつも、そういう当初の目的、周辺環境との接合、この建築の持つ話題性を考慮すると、十分役割を果たしているのではないかと。韓国の新聞が「大きすぎる」と書いていますが、このプログラムは韓国サイドがザハに提示したものであり、実際現地に立つと商業エリア故に違和感が無く、外苑エリアに70m近くそびえる新国立の計画に比べれば馴染んでいます。(この70mの与件も日本側が提示したものですけどね)ランドスケープの良い乙支路側からのビューはコンパクトで、グランドラインからのビューは思っている程巨大ではありません。

香港のイノベーションタワーは大学の研究施設でしたが、こちらはデザインを媒体にした公共施設。街の資産ですし、皆でシェアしながら育んで発信していく意気込みみたいなものを強く感じ、その意思をザハが建築として表現している。そういう意味でも、この建築・施設は十分成功していると思います。ザハが死んだ今、建築界の担い手たちが、世界中からこの建築を観に来る訳ですからね。。

店名 東大門デザインプラザ(DDP)
住所 ソウル特別市 中区 乙支路7街 2-1 (서울특별시 중구 을지로7가 2-1)
道路名住所 ソウル特別市 中区 乙支路 281 (서울특별시 중구 을지로 281)
電話番号 02-2153-0000  
営業時間 10:00~22:00 (デザインマーケット10:00~翌2:00、展示施設10:00~19:00/水・金10:00~21:00、チケット販売は閉館時間の1時間前まで) 
※オウルリム広場は24時間 休業日 月曜日(ミュージアムのみ)、1月1日
日本語 一部スタッフ可 その他外国語 英語 中国語
交通 ・地下鉄2号線東大門歴史文化公園(トンデムンヨッサムナコンウォン、Dongdaemun History&Culture Park)駅 1番出口すぐ
ホームページ www.ddp.or.kr
料金 無料

SEOUL  2016 Reported by Futoshi Hirasawa

Photo / Text : HIRASAWA FUTOSHI 
Camera : Fujifilm X-Pro1 & X-T10 
Lens : Fujifilm XF14mmF2,8 & XF18mmF2 & XF35mmF1,4
Photo retouch : VSCO & Lightroom 

 

 

Seoul 2016 Vol.03|仁寺洞・ 꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)

 次に向かったのは仁寺洞(インサドン)。次はwikipediaからの引用ですが

仁寺洞(インサドン、인사동)は、韓国の首都ソウル鍾路区にある地域である。仁寺洞キルという通り沿いに多数の骨董品店・古美術店・陶磁器店・ギャラリー喫茶店・伝統工芸品店・土産物店などが並ぶ、ソウルの文化の街として知られている。

꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)

いろいろな骨董品や美術品が見て取れ、文化人が多く住んでいる街、仁寺洞。ここにあるレストラン「꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)」は伝統的な韓食をオーガニックの食材のみで調理するお店で、ソウルで流行中の健康食ブームの先陣を切るお店です。オーナーさんは、童話作家で自身が食していたオーガニック料理を多くの人にも食べて欲しいという願いからオープンさせたお店が꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)になります。

꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)のシンプルなサイン


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)のファサード


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)の店内。ランチ時は満席で入れないので14時前に入るのがお薦め


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)の店内。伝統的な韓屋をリノベーションした素朴なインテリア


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)の店内。伝統的な韓屋をリノベーションした素朴なインテリア

ランチはアラカルトは無く、ランチセットとランチコースのみ。僕らはランチコース(23000ウォン=2300円)をオーダーし、オーガニックのビールを頼みました。暑かったので(笑)

꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)で提供されるオーガニックビール。重厚で深い味わい


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)の前菜。かいわれ大根、サツマイモ、りんごのサラダ


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)の前菜。ピーマンとなしとキウイフルーツ、韓国納豆の一口サラダ


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)の前菜。和え物三種


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)のメインデッシュ。鯖と大根のキムチ煮込み。


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)のメインデッシュ。オーガニック野菜の天ぷら


꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)のテーブルセットの一部。

ポーションは小さいですが、副食を多く出す韓食のスタイルを踏襲していて、全部いただくとお腹いっぱいになります。美食というよりもカラダに優しい食事といったイメージ。全体的な味付けは薄く、物足りない人もいるかもしれませんが、鯖の煮込みはとても美味しくて、これでご飯二杯はいけます。笑)お茶碗が小さいので二杯いけるという意味なのですけどね。。

野菜を多めにとって、血糖値を下げてからお吸い物、雑穀米、メインの煮込みとてんぷらという流れは、理にかなっていますし、好感がもてます。インテリアも料理同様素朴で、違和感が無く食事を楽しむことができます。14年前くらいだと、この手のお店ってほぼ皆無だったのですが、時代を感じるというか、世界的な健康食の流れ、スモールポーションで多彩という飲食界の潮流はここでも感じることができました。

꽃,밥에 피다(コッ・バベピダ)

  • 인사동16길 3-6
  • Seoul, South Korea

仁寺洞の街並

仁寺洞の街並


仁寺洞の街並


仁寺洞で見掛けたギャラリーカフェ。建築デザインがユニーク。


仁寺洞で見掛けたチマチョゴリのドレスを扱うショップ。建築デザインがユニーク。


仁寺洞の路地裏

SEOUL  2016 Reported by Futoshi Hirasawa

Photo / Text : HIRASAWA FUTOSHI 
Camera : Fujifilm X-Pro1 & X-T10 
Lens : Fujifilm XF14mmF2,8 & XF18mmF2 & XF35mmF1,4
Photo retouch : VSCO & Lightroom

 

Seoul 2016 Vol.02|三清洞・北村韓屋村・YIDO

今回の視察の目的地の一つ、三清洞(サムチョンドン)と北村(プッチョン)の韓屋村へ。 安国駅から徒歩五分。昔ながらの韓屋(ハノッ)をリノベーションしたレストランやカフェ、ショップが集まっており、近くには狭い路地に韓屋がぎっしりと並ぶ「北村韓屋マウル」があります。日本でもそうですが、昔のお金持ちは大抵高台に居を構えます。韓国でも然りで、この三清洞の韓屋は比較的裕福な家の家屋の集合で、凝った設えの家が軒を連ねます。

地下鉄3号線安国(アングッ)駅


三清洞の植樹。季節柄、夏紅葉などが点在し、街に彩りを与えます。


三清洞の典型的な路地


三清洞の鬼瓦と外壁のパターン


三清洞のショップサイン


三清洞の典型的な韓屋。重厚な外壁と門で構成されている。


三清洞、北村の典型的な路地


三清洞、北村の韓屋の外壁パターン


三清洞、北村の韓屋の路地と外壁パターン


三清洞の伝統的な家屋


三清洞、北村の路地


三清洞、北村の韓屋の外壁パターン。レンガ造は比較的近世(明治時代くらい)に建てられた韓屋。


三清洞、北村の韓屋の外壁パターン。最近のもの。


三清洞、北村の韓屋の門づくり。最近のもの。


三清洞の鬼瓦と外壁のパターン

 個人的に韓国・ソウルへは、仕事と視察で何度か訪れているものの、三清洞や北村へ脚を運ぶのは、これが初めて。14年前の視察時は、水原にある民俗村へ行き、韓国の建築の様式や素材などを見てきました。こちらの方が伝統的な韓屋の造りが、両班や農民の家と行った具合にカテゴライズされてわかり易いからです。また、民俗村の場合、サムルノリの様な伝統舞踊(音楽)や馬上武芸のような芸事も見学出来ます。三清洞や北村の韓屋の場合、時代背景が異なる家屋が街として連なっている事がポイントで、時代背景が異なっていても、外敵からの侵入を防ぐ為に重厚な外壁と門を構える造りはほぼ一緒と言った感じの特徴が見て取れます。

比較的最近建てた住宅と路地の関係。風致規制故か建築のトーンが揃っていろ


三清洞、北村の韓屋の外壁パターン


三清洞、北村の韓屋の外壁に書かれたハングル・サイン


三清洞、北村の韓屋の典型的な門構え


三清洞、北村の韓屋の典型的な門構え


三清洞、北村の韓屋の典型的な路地

民俗村を見学した時は、余り感じなかったことですが、三清洞、北村の典型的なの韓屋は押し並べて軒が低く、建物のボリュームを感じさせない造りになっています。韓国の伝統的な住宅建築は、重層にしないイメージがあり(この辺の理由はちょっと調べてみないと解りませんが)路地との関係性なのか、単に狭い土地に対して陽の光を取り入れる工夫からなのか、興味がわきました。

青磁や白磁をベースに作陶する女性作家イ・ユンシンのショップギャラリーyido。


yidoの店内。ソウルで気になるレストランの器は、この人が手がけているものが多い


yidoの作品。ソウルで気になるレストランの器は、ここで手がけているものが多い

北村韓屋村には、韓屋をリノベーションしたショップが数多くありますが、伝統的な所作を取り入れた器や陶器を扱うショップ&ギャラリーも点在します。今回の視察は器やレストランでの持て成し方もチェックする目的があったので、ソウルの有名レストラン御用達の作陶家イ・ユンシンさんのギャラリーyido(イド)にも立ち寄りました。青磁や白磁と言った韓国の伝統的な作陶技法をモダンに解釈し、使いやすい器に仕立てているのが特徴です。印象的なのは、釉薬の色彩。青磁の青でも釉薬を繊細に扱っていてシンプルな形故に印象に残りました。

食器は、その国の食生活と密接に関わっています。韓国の作法の場合、器を手に取って食べる事はNGで、箸で摘んだり、スプーンよそって食事を取ります。なので器は原則、膳の上に載せっぱなし。また、大勢でシェアする主菜やメインデッシュと御飯、副食などの個々に配食するものを明確に分けていて、陶器でも蓋をつけたり(保温)と日本とは異なる特徴があります。yidoの器もその辺を考えられて創られており、現代ならではの作陶でモダンにつくられています。後述の茶啖 (タダム) モダンコリアンキュイジーヌでは、メニューの内容に即したカタチで提供されていてとても印象に残りました。

 

SEOUL  2016 Reported by Futoshi Hirasawa

Photo / Text : HIRASAWA FUTOSHI 
Camera : Fujifilm X-Pro1 & X-T10 
Lens : Fujifilm XF14mmF2,8 & XF18mmF2 & XF35mmF1,4
Photo retouch : VSCO & Lightroom