情報を整理するだけでなく、印象を伝達するためのグラフィックデザイン
Designcafe™で手がける展示会ブースやイベント空間のデザインの中でのグラフィックデザイン、パネルデザインは、コミュニケーションとして「どこをゴールとするか?」によって変わっていきます。これらは主にブース内部の壁面グラフィック・パネルデザインとハンドアウトと呼ばれる販促物の二つに分別できます。海外の展示会は「企業や商材の印象を高める」「印象づける」事に重きをおきますが、日本の展示会の場合「商材そのものや性能、効力の魅力を伝え商機につなげる」意識が高く、トレードショーの要素が強いからです。その目的は同じ商材であっても出展する展示趣旨によって変わってきますが、大きく分けると下記のようなカテゴリーイメージになります。
1:製品(商品)を展示し、手に取りながら製品の魅力がダイレクトに伝えられるケース
商品そのものが目の前にある為、対人的な対応がメインとなりグラフィックに関しても商品の魅力というよりもブランドや企業の印象を訴求していく事になり、ブース全体の造形とのリンクが不可欠になります。アイコンとしてのグラフィックデザインといった感じでしょうか。
2:製品(商品)は素材やバーチャルなもので手に取ることが出来ない為、解説が必須なケース
素材は特に性能や他のライバル製品との差異を打ち出す事が多く、グラフィックデザインやパネルデザインも「インフォグラフィック」や「チャート」をバランスよく計画していく印象です。最もビジー(煩雑)な印象になりがちなのもこのカテゴリーの特徴でグラフィックデザイナーからすると腕の見せ所が多いカテゴリーです。
3:製品(商品)は体験型のサービスで、魅力ある印象を伝えることに重きを置くケース
体験型サービスをいかにビジュアライズし、信頼できる印象を打ち出す事が必須になってきます。フォトコラージュやキービジュアルの設定、そして心に残るキャッチコピーが必要です。
このように展示会ブースやイベント空間の場合「目的」がどこにあるかによって、ブースデザインの造形もグラフィックデザインのアプローチの仕方も自ずと変わってきます。全てに対して共通して言えることは「ブースデザインの造形とグラフィックデザインがその目的に対してアプローチ上のストーリーが出来ているか」ということです。
伝達するためのグラフィックデザインの展開例
FOODEX フーデックス2019 ”PLEASURE WINE”ブースのイメージビジュアル。取り扱うワイナリーの生産者ポートフォリオを内側に配置し、親近感を演出。
東京モーターサイクルショー2019 HYODの事例。エアーバッグシステム、HYOD Air-Boost(着衣型エアバックシステム)のデモ展示。背景にGPライダーのエモーショナルなキービジュアルを展開し、製品フィロソフィーを感じる演出。ブックレット、カタログ、雑誌広告と連携したVI(ヴィジュアルアイデンティティ)を打ち出した。
東京インターナショナルギフトショー2019に出展した灯のブランドanrecの展示ブース。「灯りと暮らす」をテーマに、シンプルなコピーとコンセプトテキストでanrecの雰囲気に寄り添う空間の設えを企てている。
JAPANTEXに出展したウインドウプロダクトメーカー、TOSOの展示ブース。窓越しに見えるプロダクトとの対比として、壁に窓枠や街灯のイラストで表現し臨場感を演出。ブースデザインとイラストレーションは佐久間理恵(Designcafe / maroom)
高機能プラスティック展に出展した、東レ・ダウコーニングの展示ブース。透明度、熱粘性などに代表される素材「シリコーン」は機能値や性能での歩留が肝心な為、パネルデザインはグラフやチャートによる性能訴求が重要。ビジーになりがちなグラフやサンプルによる性能訴求をグラフィックデザインで情報整理し、ラウンド形状のシンプルなブースデザインでシリコーンの柔らかさを訴求している。また、パネルデザインはドライマウントや貼パネではなく出力経師(展示会ブースの仕上げとなる経師紙をベースにインクジェットの出力で表現)とする事で、仕上の一体感を醸成している。性能訴求のインフォグラフィックのボリュームから展示ブースの訴求面積を割り出した「グラフィックデザインベース」の展示会ブースデザイン。
ハンドアウトツールとの連携
展示会ブースやイベント空間のデザインの中でのグラフィックデザインは、空間に付随する部分だけでなく、ハンドアウトツール(配布物)と連携することで、展示情報を補完しより濃密なコミュニケーションを得る事ができます。Designcafeの過去の実例で多いのは「展示商品のダイジェスト版リーフレット」や「商品カタログ」などで、展示ブース側のインフォグラフィックとリーフレットを連携させ、より細かい情報はリーフレットで持ち帰れるイメージを作る事です。また、印象の部分でも展示ブース側のグラフィックデザインとハンドアウトが揃っている事によって、持ち帰った後の情報の再考を促す事ができます。
紙バッグのような「来場者に持ち歩いてもらうことでメディアとなるモノ」と展示会ブースデザインをリンクさせるのも有効な手段です。上記をQUALITIAさんの場合、意図的なデザインリンクにより来場者への意識づけを持たせることができます。展示会で特に多い情報収集で来場されている場合、少しの意識づけから興味を喚起し立ち寄る行為に繋がるケースは無視できません。今回のケースQUALITIAさんの場合「メールセキュリティー」がメインの商材。老舗のメールセキュリティーベンダーという立ち位置とメールという「誰でも使っているツール」を「セキュアに便利に使う」ことが来場者への重要なメッセージとなる為、QUALITIAのQを象ったわかりやすいデザインが有効なのです。
グラフィックデザイナーの起用について
Designcafeでは、展示会やイベントのゴールや目的に応じて、グラフィックデザイナーをアサインしています。これはデザイナーの「得意」な部分を引き出したい事と必要としているグラフィックデザインのワークボリュームを考慮する必要があるからです。グラフィックデザイナー でも得手不得手はそれなりにあり、表現として得意としている部分で力が出せるかどうか見極めています。ワークボリュームに関しては、ほぼ納期に間に合わせられるかにかかってきますが、グラフィックデザインを必要とする範囲が多岐にわたる場合、1人で活動しているグラフィックデザイナーは起用がしにくく、ある程度組織で勝負しているグラフィックデザイン会社に依頼する必要が出てきます。
また、出展者でグラフィックデザイナーを抱えられている場合は、空間デザイナーとしてリクエストをだし、議論しながら進めていくケースもあります。 Designcafe社内で内製するケースもありますが、ハンドアウトツールのような「紙モノ」系をまとめるには、印刷知識があるグラフィックデザイナーを外部から呼んで来てしまった方が良いという考えがベースにあります。最近ではクライアントの出展目的に合わせて、デザインのトーン&マナーをDesigncafeで策定し、その流れに合わせてアサインするケースがほとんどです。
外部からアサインする場合は、グラフィックデザイナーのデザインコストとツール制作費が発生しますが、ブースデザインと連携したツール作成が可能になる為、特に多領域&専門性が問われる局面ではコスト相応のパフォーマンスを得られる事ができます。また、ハンドアウトについても体裁にも気を使い「持ち帰る方が簡単に捨てたくならないモノ」を目指している為、昨年の展示会のハンドアウトを今でも手元資料として持ってくださっている出展社&得意先もいらっしゃいます。グラフィックデザインにある程度予算を持つ事で、コミュニケーションの質が格段と上がるわけです。
関連ページ:
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