埼玉県立近代美術館で「戦後日本住宅伝説―挑発する家・内省する家」展を観に行ってきました。日本の建築界を支えてきた重鎮の住宅作品、丹下健三さんの自邸「住居」(1953年)から始まり、菊竹請訓さんの「スカイハウス」、伊東豊雄さんの「中野本町の家」、安藤忠雄さんの「住吉の長屋」(1976年)まで、戦後に建てられ伝説となった16軒の日本住宅を取り上げています。
世界的に見ても、非常に特殊な日本の住宅業界。特に分譲住宅(土地と建家がセットになって販売されている)は、その当時の日本の政策と相まって急速に発達した時期(1960年代)であり、この展示会で登場する建築家の住宅の登場時期とリンクしています。景観や歴史保存の観点で簡単に建て替えが効かないヨーロッパとは異なり、施主の意向で簡単に建てられる状況が日本の建築家にはあった訳です。そういう幸運と、戦後復興期という時代のマインド、コンテクスト、要請される条件等が折り重なり、試行錯誤の上で成り立っている様子が、この展示会で感じ取る事ができます。
建築の展覧会というと竣工写真、模型、図面、エスキースで構成されるのが定番ですが、それに留まらず数十年経って住み手の暮らしぶりがうかがえる現在の写真、大判プリントのタペストリー、設計図を実寸に準え「寸法感を体感出来る」エリアなど、その作品の持つ魅力を時代背景を加味しながら考察する場になっていて、建築家側の意図だけでなく、発注主である「住み手」・・建築家の自邸の場合はそのご家族となるのですが・・の回想インタビューも微笑ましくて楽しくお茶目な部分も見え隠れしたりして、印象深かったです。全体としての構成が時代の流れとリンクしており、非常に密度の高い展示会だと思いました。
「戦後日本住宅伝説―挑発する家・内省する家」展
会期 2014年7月5日(土)〜8月31日(日)
休館日 月曜日(7月21日は開館)
開館時間 10:00 ~ 17:30(入場は閉館の30分前まで)
観覧料 一般1100円(880円)、大高生880円(710円)
※( )内は団体20名以上の料金。
※中学生以下、障害者手帳をご提示の方(付き添いの方1名を含む)は無料
※併せてMOMASコレクション(1F常設展示室)も観覧可。
主催 埼玉県立近代美術館、読売新聞社、美術館連絡協議会