Designcafe-Blog | ブログ

Designcafe™ の主宰者、平澤太のブログです。デザイン考、ライフワーク、インサイト、旅行などを不定期に綴っています。

Macau / Hong Kong 2014 Vol.4|朗豪坊(Langham Place)〜力寶中心(Rippo Center)

二日目午後からは、旺角のLangham Placeと香港島に渡ってアドミラルティにあるRippo Centerへ。Langham Placeは、旺角の再開発(複雑な街路や屋上建て増しで問題となった旺角エリアの防災面の配慮と文教エリア商業エリアが隣接する為、風紀や治安の面を憂慮の上の開発)を担う商業施設で、彌敦道(Nathan Road)の西側、亜皆老街(Argyle Street)に面する一角(砵蘭街:Portland Street)の250m×100m程度の範囲を再開発しています。設計は商業施設の建築計画では定評のあるジョン・ジャーディー。アジアの主要都市では、この人が関わった商業施設が必ずあるのではないか思われる位、様々な計画に関わっています。日本だと六本木ヒルズの商業施設エリア、大阪のなんばパークス、博多のキャナルシティーなどこれまた主要都市のランドマーク的施設を手掛けていて、迷路のように導線とショップを配置し、回遊を促すような、複雑なマスタープランを立てる事で有名な商業建築家です。 実際見学すると、ジョン・ジャーディー節健在といった感じえで、他の施設より重層的な構成(香港は狭いですから、床面積を稼ぐとなると必然的に重層的)になっており、ライムストーンやテラコッタを多用するオーガニックなマテリアルもこの人が手掛けた事を証左します。 狭い建築面積を重層的に計画していますから、空間の設えも必然的にバーチカルな方向に向かっていきます。

15階建ての建物の中に、100余りのテナントが入居しており、4階から最上階まで続くガラス張りのアトリウムをはじめ、5階分もある長大な通天電梯(エックスプレスカレーター)と呼ばれるエスカレーターや、螺旋階段状の展開など、バーチカルな空間を誇張するしかけが散りばめられています。 このモール施設の設計は、前述の通りアメリカ人建築家のジョン・ジャーディが設計を担当していますが、日本にある各施設と類似点も多く、各フロアー付近に過剰にネオンサインの看板が重なり合うような香港らしい街区の特徴を与えています。 低層階には、百貨店の香港西武が入居していおり、コスメフロアーや飲食店の中には日本でお馴染みの店舗も幾つか見受けられます。そこそこ高級な雰囲気を持っていますが、同時に服飾店などは比較的若年層向けにターゲットを当てキャッチーな印象も併せ持つなど、旺角と言う場所の性格を色濃く反映したマスタープランになっています。 

その後MRTに乗り、アドミラルティにあるRippo Centerへ。この建物はアメリカの建築家、ポール・ルドルフPaul Rudolph)によって設計されたツインタワーで、タワー1(Tower One)は高さ172mの44階建て、タワー2(Tower Two)は高さ186mの48階建て。形状は見ての通りかなり複雑な形をしていて「コアラユーカリの木にしがみついている様に見える」とか言わています。後期モダニズム建築のスターであるポール・ルドルフの代表作でもあるこの建築は何回か持ち主が替わっており、今に至ります。 周辺を見てもわかりますが、スカイスクレイパーの密度感で言えば世界最強(?)のエリアである金鐘〜中環エリアにある為、この特徴的なファサード面は限定的な角度からでしか見えません。25年近く経つ建築物ですが(出来た当時から)このエリアの建築の密度感は明らかにオーバースケールで、グランドフロアから表に出た時の圧迫感というのかな?見上げた時の巨大さは尋常ではありません。経済的な要請からやむを得ないのでしょうけど、モダニズム&ポストモダンのショーケースとなっている金鐘〜中環エリアの超高層ビル群を下から見上げて思うのは、人間の身体感覚を威圧する密度であり、これに比べればザハのJockysClub Innovation Towerやダニエル・リベスキンドThe Run Run Shaw Creative Media Centreがヒューマンスケールの範囲内に納まっている故にほっとしたりします 笑。一概に比較出来ないですけどね。。

Macau & HongKong 2014 Reported by Futoshi Hirasawa

Hong Kong 2014 Vol.1|九龍香格里拉酒店(Shangri-La Hotel Kowloon)
Hong Kong 2014 Vol.2|尖沙咀 (Tsim Sha Tsui)〜油麻地 (Yau Ma Tei)〜Peninsula HK
Hong Kong 2014 Vol.3|Innovation Tower/The Run Run Shaw Creative Media Centre
Hong Kong 2014 Vol.4|朗豪坊(Langham Place)〜力寶中心(Rippo Center)
Hong Kong 2014 Vol.5|PMQ元創方 Complex〜文武廟〜中環至半山自動扶梯
Macau 2014 Vol.6|Macau World Heritage.1
Macau 2014 Vol.7|Macau World Heritage.2
Macau 2014 Vol.8|Macau World Heritage.3
Macau / Hong Kong 2014  Vol.9|好吃的吃飯(A delicious meal)

 

Macau / Hong Kong 2014 Vol.3|Jockys Club Innovation Tower / The Run Run Shaw Creative Media Centre

 

二日目の午前中は、デコンストラクティビズム(脱構築主義)二連発でザハ・ハディット(Zaha Hadid)設計で昨年竣工した香港理工大学ジョッキー・クラブ・イノベーション・タワーとダニエル・リベスキンド(Daniel Libeskind)設計の香港城市大学メディアセンターを見学してきました。 デコンストラクティビズム(脱構築主義)とは現代建築の様式の一つで、伝統的な建築の形状に頼らず非常にアンバランスな形状を常態化させた所に特徴があります。このような刺激的な形状は、社会やその土地の歴史に対して意義のない、単なる形態の実験に過ぎないと言った批判が度々湧き出ており、日本でもザハ・ハディット設計の国立競技場の立て替えが物議をかもしていますね。

 

 ザハ・ハディット(Zaha Hadid)が手掛けた、香港理工大学ジョッキー・クラブ・イノベーション・タワーは昨年竣工・今年の春にグランドオープンした、15階建ての施設。デザインスタジオ、研究室、ワークショップ、講演会、セミナースペース、教室や展示エリアを備えています。純粋な大学の施設ですが、香港の競馬協会が資金提供した施設なのでこの名がついているようです。グランドオープンしたのは今年の三月ですが、グランド面は絶賛工事中でした。笑 このタワーは、大学の施設と言う事もあって比較的自由に見学する事が出来るのですが、僕らは外側から敷地外を回り込み→その後内部を見学。 外観の形状は見ての通りレイヤードな形状でどこから見てもボリュームが異なります。このレイヤーの部分は、庇の機能も担っておりデザインコンセプト一辺倒な建築ではありません。紅磡站からほど近い香港理工大学の敷地内と言う事もあり、周辺の環境が建築の密度が比較的に低い、恵まれたエリアに計画されています。この事も関係していると思いますが、比較的こじんまりとした建築物と言う事もあり、最近計画されたザハ・ハディット設計の建築物と比較してもスケール感もそれほど違和感が無く、大学の学術施設であると言う事を考慮しても、良く纏まった建築だと思います。

 

インテリアについても、外観の形状をそのまま引き継いだようなシームレスな設えが展開されていて、見る人を引きつけます。ヴォイドの抜け、導線方向からの視線の流れがあり、恣意的な意図がうかがえます。ディティールがもう少し納まっていたらもっと良かったのと、そのディティールからインテリアが破綻している箇所があり、その辺が少し残念でした。デコンストラクションのディティールを求めるのが無理な事なのかもしれませんけど、今年3月に出来上がった割には、内外観共に汚れが目立ち、仕上げに対する対汚性能の検討がもう少しなされていれば良かったなと、個人的に思いました。建築は長く使う都市の資産ですし、ザハが手掛けた最新作。世界中からこの建築を観に来る訳ですからね。

 

ダニエル・リベスキンド(Daniel Libeskind)が手掛けた香港城市大学メディアセンターThe Run Run Shaw Creative Media Centreは、 研究所と劇場、コンピューター工学とメディア技術の教室を配した中核施設。施設そのもののサイズは、ザハの手掛けた香港理工大学ジョッキー・クラブ・イノベーション・タワーよりも小規模で、香港の繁華街旺角よりもさらに北の九龍糖にあります。こちらも文教エリアの外れにあるので、低密度で緑の広がる好立地に位置しています。「ラフカットダイアモンド」と呼ばれる結晶に見立てた外観デザインになっていおり、構造梁、窓、ドアや天井のホリゾントパターンはラインで繋がっており。すべて形状が結晶に結びついてきます。 ザハとは対照的で、先鋭的なラインとボリュームが連なりから形成されていて、膨大なスタディを行わないと導けない形状です。色々な角度で表情を変える建築ですが、香港理工大学のキャンバス側から上がってきたビューが最もこの建築を美しく魅せます。

インテリアに関しては、ザハよりもコンサバティブに纏まっており、学生が研究開発する為のコラボレーションルームに多くの面積を割いていたのが印象的でした。空間のボリュームが建築のサイズに対して大きく取られていた事にもよりますが、ボイドの抜け感やシーケンスな見え方は破綻が無く、視線やアクティビティを誘います。細かい検討もよくなされていたんでしょうね。ディティールも良く(施工精度からくる残念な面が残るにせよ)全体として使うのが楽しい空間になっています。

現在の建築界の一派閥を形成してるデコンストラクティビズムですが、今回香港で見学した二つのケースでは、建築のボリュームがオーバースケールしていない、身体感覚的にそれほど無理の無いサイズで納まっている事と、大学の付属施設の建築であるという敷地与件的に恵まれた環境にある事、モニュメンタルな建築計画を要請した大学側の意図が明解な(国立競技場のようなヒューマンスケールを超えた感覚にならない)事もあって、個人的にはこれこれでありかなと。要請する側のリクエストにも拠りますが、デコンストラクティビズムは周辺環境にゆとりのある、低密度の環境下でないと周辺生活者の理解を得るのが難しいのかもしれませんね。。

 

 

Macau & HongKong 2014 Reported by Futoshi Hirasawa

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Hong Kong 2014 Vol.2|尖沙咀 (Tsim Sha Tsui)〜油麻地 (Yau Ma Tei)〜Peninsula HK


初日の夜は、ベースホテルである九龍香格里拉酒店(Shangri-La Hotel Kowloon)近くの尖沙咀から繁華街の油麻地&旺角エリアを経由してペニンシュラ(Peninsula HK)を散策しました。香港のダウンタウンにして昔からある繁華街「油麻地」「旺角」。The香港を味わうのであれば避けて通れないエリアですが、丁度デモの真っ最中であり、物々しい雰囲気。そんな中でも、市井の人たちは冷静に営みを続けていて、物騒な雰囲気ではありませんでした。香港と言えば、無秩序に乱立する看板・・のイメージが強いのですが、僕が初めて香港を訪れた20年前から比べると、ネイザンストリートの看板は寂しくなる一方で、油麻地&旺角エリアは派手になっているような印象を受けます。 香港に限らず、台北やシンガポールでも外食の中心は屋台や露天商。あの独特な香り(行った事のある人ならわかりますよね。笑)にちょっと滅入る時もありますが、たくましさも感じ、生命力の強さを感じます。生きる基本は食べる事ですしね。僕は胃腸が弱いので香港や台北の屋台で食事をした事が無いのですが、香港の場合、ワーカーホリックが多い事もあって飲食店の営業時間が東京並みに遅い時間まで開いています。これは旅行者にとって有り難い限りで、東京と同じような感覚で飲食が楽しめます。

油麻地&旺角エリアを2時間散策しながら食事を済ませ、ホテルに戻る途中でお酒が呑みたくなり、ペニンシュラ香港へ向かいました。時期的に丁度クリスマスと言う事もあり、イルミネーションでより華やかになったファサードがお出迎えしてくれました。気温24度の香港で、クリスマスイルミネーションは、クリスマス=寒い冬のイメージが強い僕らにとってはとても新鮮。個人的にペニンシュラは5回行っているのですがこの時期に来るのは初めてと言う事もあって、しばし見入ってしまいました。

その後は中を見学しながら、休憩がてらBarへ。ちょうどジン&トニックのスペシャルメニューを薦められたので、メンバー全員で違うものをオーダーしました。女性のバーテンダーがワゴンサービスのような感じでやってくるのですが、あつらえたワゴンにはBarセットが綺麗に並べられていて、見事な所作でステアしてくれます。このジントニックがとても美味しくて、「上海の時のシャブシャブ(ジンが薄い)ジントニックとはえらく違うな」と衛(小畠)と話をしていました。笑 もとい、インテリアの設え(&歩き回った疲れ)と相まってかなり酔ってしまったのですが、空間の設えと所作が一体になると、心地よくなる。何でもそうですが、こういう経験は体感しないとわからないですね。。

 

 

Macau & HongKong 2014 Reported by Futoshi Hirasawa

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