Designcafe-Blog | ブログ

Designcafe™ の主宰者、平澤太のブログです。デザイン考、ライフワーク、インサイト、旅行などを不定期に綴っています。

ヤオコー川越美術館・小江戸川越・蔵の街

ヤオコー川越美術館・シンボルツリーサークル

ヤオコー美術館・エントランスのサイン

ヤオコー川越美術館・展示室1

ヤオコー川越美術館・展示室2のトップライト部

ヤオコー川越美術館・ラウンジで頂けるお抹茶&おはぎセット。入館料込みで600円也。

ヤオコー川越美術館・ラウンジから眺める水盤

ヤオコー川越美術館・ラウンジ天井

ヤオコー川越美術館・敷地正面からの建物ビュー

川越氷川神社・大鳥居

川越氷川神社・境内

川越氷川神社・境内にある行灯

川越氷川神社・鯛のお神籤

小江戸の街・菓子屋横町

小江戸の街・蔵の街

小江戸の街・蔵の街

小江戸の街・蔵の街

小江戸の街・時の鐘

小江戸の街・COEDOビールドラフト

ヤオコー川越美術館と小江戸の街・川越に行ってきました。都心から車・電車で1時間。川越は町を挙げて江戸時代に創られた街並を丁寧に保存している街ですが、小江戸の街並は過去数回訪れた事があったので、今回は2011年に竣工したヤオコー川越美術館を中心に、氷川神社などを織り交ぜて撮影を楽しみながら散策してきました。 

 ヤオコー川越美術館は、主に埼玉西部を中心に北関東一円に店舗展開しているSM、ヤオコーが創業120周年の記念事業として計画された美術館で、リアリズムを追求した抽象画家・三栖右嗣のコレクションを展示・一般開放しています。 元々は同社創業者一族がコレクションしていた作品のようですが、地域性の高いスーパーマーケットを生業にしている同社が地元に貢献出来る記念事業として長年温めていた計画とのこと。また、三栖が埼玉県比企郡ときがわ町にアトリエを構えていた事とヤオコーが小川町で創業していた縁も大きかったようです。 

ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (45)

ヤオコー川越美術館・シンボルツリー側からの建物全景


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (44)

ヤオコー川越美術館・敷地正面からの建物全景


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (42)

ヤオコー川越美術館・エントランスのサイン


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (35)

ヤオコー川越美術館・敷地正面からの建物ビュー

 建築デザインとしては、見ての通りとてもミニマムに纏められていて、小規模と言う事もありヒューマンスケールを逸脱しないサイズ感の建築です。竣工して3年経過している事もあり、周辺に計画された植樹・緑化も定着していて、建物周辺の水盤の効果もあり穏やかなたたずまいがあります。

ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (43)

ヤオコー川越美術館・シンボルツリーサークル

シンボルツリーのサークルは、ベンチ仕立てになっていて建物とお揃いのコンクリート製です。植え込みに見えるグレアカットフード付きアウトドアスポットライトの数から、夜は象徴的に浮かび上がらすことで、一つのサインとしての象徴性をこの樹に持たせている意図が伺えます(ちなみにこの美術館、道側に大きなサインが一つもありません)。

ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (41)

ヤオコー川越美術館・展示室1


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (39)

ヤオコー川越美術館・展示室2


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (40)

ヤオコー川越美術館・展示室2のトップライト部

内部に関しては、4つの大きな空間に仕切られていて、展示室は「陰と陽」の関係性で対比した空間になっています。展示されている三栖の作品からインスパイアーされているようですが、作品の世界に入り込みやすくする為に無駄を削ぎ落とした設えになっていて、必要最低限の光(展示室1)・開放感を醸成させる光(展示室2)の対比はとても印象的です。エアコンの送風口もスリットライン状に幅木に添わせている徹底ぶりで、マニア心をくすぐります。細かい話ですが(笑)。。

ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (37)

ヤオコー川越美術館・ラウンジから眺める水盤


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (36)

ヤオコー川越美術館・ラウンジ天井


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (38)

ヤオコー川越美術館・ラウンジで頂けるお抹茶&おはぎセット。入館料込みで600円也。

今回は「伊東豊雄さんが設計した美術館」が「川越の蔵の街」のちょっと行った所にあるらしい・・位の前知識で行ってきたのですが、本川越駅からの導線・・蔵の街→氷川神社→新河岸川の畔というロケーションの設定は絶妙で(川越に詳しい人なら解ると思いますが)この散策路で廻る事でこの美術館の魅力を引き出しています。後で気がついた事ですが、新河岸側の両岸は桜並木が植えられていて、この美術館に多く収蔵されている「桜をモチーフにした絵画」と準えているんですね。桜の季節に散策したらきっと三栖作品の魅力が倍増するんでしょうね。

三栖作品についても、この美術館のリーフレットを読んで知った程度の知識でしたが、そのリアリズムの作風は、彼独特のデフォルメがあり、恣意的で、若い時よりも晩年の方が顕著に現れます。絵画は実際に間近で見ないとその迫力が伝わって来ないですし、写実的な作風なので子供でも楽しめます。建築も然り。そういう意味でもこの美術館は一般の人が接しやすい美術館なのでしょうね。また余談ですが、ラウンジで頂けるおはぎセットは絶品でした。美術館の方に伺った所、ヤオコーさんでも同じものが買えるそうです。笑 

ヤオコー川越美術館(三栖右嗣記念館)
施主:ヤオコー
設計:伊東豊雄/伊東豊雄建築設計事務所
所在地:埼玉県川越市氷川町109-1
用途:美術館
構造:壁式鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
規模:地上1階
竣工:2011年12月
公式サイト http://www.yaoko-net.com/museum/

川越氷川神社・小江戸の街 (32)

川越氷川神社・大鳥居


川越氷川神社・小江戸の街 (30)

川越氷川神社・境内


川越氷川神社・小江戸の街 (26)

川越氷川神社・境内にある行灯


川越氷川神社・小江戸の街 (22)

川越氷川神社・鯛のお神籤


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (20)

小江戸の街・菓子屋横町


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (17)

小江戸の街・蔵の街


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (16)

小江戸の街・蔵の街


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (12)

小江戸の街・蔵の街


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (9)

小江戸の街・時の鐘


ヤオコー川越美術館・小江戸の街 (1)

小江戸の街・COEDOビールドラフト

 ヤオコー川越美術館の後は、裏手にある縁結びの神さまで有名な「川越・氷川神社」→昔ながらのお菓子を売るお店が軒を連ねる「菓子屋横町」→小江戸川越を象徴する「蔵の街」→蔵の街の中にある川越のシンボル「時の鐘」→旧田中家住宅を改装した「カフェ・エレバート」→大正期の看板建築が並ぶ「大正ロマン通り」といった感じで散策してきました。 小江戸という名称でそれなりの知名度もある川越なので、有名どころの説明は省略しますが、個人的に気に入っているのは「カフェ・エレバート」。外観は典型的な看板建築の洋館で奥に和創菜と四季のすし「風凛(ふうりん)」が併設されている、一見不思議な店ですが、店の造りもクオリティーも申し分無く、川越自慢の地ビール「COEDO」がドラフトで頂けます。通常5種類の瓶ビールで提供されるCOEDOですが、川越ではブルワリーが地元にある為、ドラフト(1種類)も提供されているんですね。すばらしい。埼玉には自慢出来るものが少ない、出身県民としては寂しい所なのですが、近年はお酒・・特に秩父のウイスキー「Ichiro’s Malt」や川越の「COEDO」のお陰でお酒好きが注目する場所に変わってきました。世界の名だたる賞を受賞してきた、埼玉が誇るお酒ツートップです。このお酒を〆に建築を探訪するのが正しい川越散策だと思います。笑

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LOG ROAD DAIKANYAMA

2015年4月17日第一弾オープンした、LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)に、先日立ち寄ってきました。東横線・渋谷〜代官山間の地下化に伴い線路跡地化した全長220mの敷地を再開発して作られた都心型の商業施設です。

ログロード代官山に展開するショップは全部で3つで、コアテナントは、アメリカ西海岸の老舗セレクトモールFred Segal(フレッドシーガル。これが日本初上陸)。その他に、サンフランシスコの人気ベーカリーTARTINE BAKERY & CAFE(5月以降のオープン)、キリンビールの新しいクラフトビールブランドの旗艦店で新しいビールの価値を提供するSPRING VALLEY BREWERY TOKYO(スプリングバレーブルワリー東京)が展開されています。ランドスケープも四季折々の花と緑も楽しめる空間となっており、線路跡地の細長い敷地形状に併せて展開されている建築と相まって、散歩するには丁度いい環境です。

ログロード代官山 | 代官山側からの入口サイン

SPRING VALLEY BREWERY TOKYO(スプリングバレーブルワリー東京)

代官山側から入ると手前にあるのが、SPRING VALLEY BREWERY TOKYO(スプリングバレーブルワリー東京)。ブルワリーというだけあってここで作ったビールをそのまま提供できるキリンビールの旗艦店。レギュラーのクラフトビール6種に加えて限定ビールや実験的なビールもラインアップしており、ビール好きにはたまらないです。この日は気温も高かったので長蛇の列が出来ていたので入るのは断念しました。

ログロード代官山 | 代官山側からの眺め

LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)内のFred Segal(フレッドシーガル)

LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)

LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)内のFred Segal(フレッドシーガル)

LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)内のFred Segal(フレッドシーガル)

LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)内のFred Segal(フレッドシーガル)

コアテナントであるFred Segalは、3つの建物とキッチンカーで構成されていてMart、Man、Womanに分かれています。セレクトショップですが、代官山という場所柄かなり絞り込んだエッジなMDです。

女性向けの「フレッド シーガル ウーマン」は“密かな贅沢”をコンセプトに、ウェア、コスメ、ライフスタイル雑貨を展開。 男性へ向けた「フレッド シーガル マン」は“好奇心に満ちた大人の男性のニーズとライフスタイルを満たす”をコンセプトに、アメリカ西海岸をイメージしたエフォートレス&ノームコアなウェアを中心にセレクトしており、ウェアの他にシューズ、ステーショナリーなどの雑貨を取り揃えています。2階の開放感あふれるラウンジテラスの迎えには、ミリタリーウェアやマグカップなどのヴィンテージアイテムが展開していて趣向性の高い構成。「ザ・マート・アット・フレッド・シーガル」には、米国ポートランドで人気の「カムデンズ ブルー ☆ ドーナツ」が日本初出店。アメリカでも話題のドーナッツ屋さんと言う事もあって売り切れ続出。運良くチョコレートのシンプルなドーナッツが購入出来ましたが噂通りでとても美味しかったです。

LOG ROAD DAIKANYAMA(ログロード代官山)内のFred Segal(フレッドシーガル)

「開放感溢れ、風格のある別荘地を訪れたときに感じるような清々しさや、穏やかな気持ち、思わず深呼吸したくなるくつろぎ感」をイメージし、「代官山の街自体のブランド価値を高める存在となる施設でありたい」

というプレスリリースに違わない、都心のオアシスのような施設です。元々東急東横線で意識的に分断されていたエリアの再開発であり、南北エリアを繋げるのみならず、シンプルな矩形の建築が点在する事で意図的に脚を運ばせるような創りに共感を覚えました。コストコンシャスに押さえられたサイトデザイン・建築デザインですが、渋谷・代官山・恵比寿をクロスオーバーするエリアで暮らす&働く人たちの充足を得る為の仕掛け(集い、憩い、刺激)が整っています。小さい施設ですが、次回はうちのピエール(愛犬)と一緒に行きたいです。

ログロード代官山(LOG ROAD DAIKANYAMA)
オープン日:2015年4月17日(金)
敷地面積:約3,200㎡
建築面積:約1,300㎡
店舗延床面積:約1,900㎡
場所:東京都渋谷区代官山町13ほか
店舗棟数:5棟
最寄り駅:東横線「代官山駅」より徒歩4分、JR恵比寿駅より徒歩9分
テナント:フレッド シーガル、スプリングバレーブルワリー東京、タルティーン ベーカリー&カフェ

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大阪万博1970 デザインプロジェクト

国立現代美術館で開催している「大阪万博1970 デザインプロジェクト」展を観に行ってきました。1970年3月15日から開幕した大阪万博(日本万国博覧会)は日本初の総合博であり、会期中の6カ月で6,421万人が来場。日本初の万博であり、企画も運営も全て未知の世界である大阪万博は、デザイナーにとっても空前の大舞台であり、実験の場でもあった訳です。「大阪万博1970 デザインプロジェクト」展は、万博成功の裏方でもあるデザインに焦点を当て、読み解くことにフォーカスを当てた企画展です。

 

大阪万博の開催が正式に決まったのは、東京オリンピックの翌年1965(昭和40)年。4年半後の開催に向けて矢継ぎ早に準備進める訳ですが、東京オリンピックでも活躍したデザイナー(大御所の先生たちですね)が早速テーマの決定、基本構想の策定、シンボルマークの制定などを進めます。国内外に周知させる、もしくはアピールする為にはやはりシンボルとキービジュアルが必要ですから、先陣を切る訳です。このシンボルマークは紆余曲折あって、コミッティによって最初に選ばれた公式シンボルマーク(デザイン:西島伊三雄)に当時万博協会の石坂泰三会長から物言いが入り、再度選定しなおされます。最終的な公式シンボルマークをデザインされたのは大高猛さんの案。5枚の桜の花びら(=日本)に見立てながら5大陸(=世界)も暗喩させる洗練されたシンボルです。今回の展示の良い所は、選定から漏れたシンボルマーク案も公開している所で、亀倉雄策さん、田中一光さん、仲條正義さん、永井一正さんらの競演が見られます。ボツ案ってなかなかお目にかかれないですから。。

 

 

第二部では、環境デザイン面にフォーカスが当てられています。会場構成、建築(お祭り広場や各種パビリオン)、サイン計画、バスシェルターや電話ボックス、モノレールなど主にインフラ面を支えたデザインです。1967(昭和42)年3月からスタートした造成工事は、日本のイベントではオリンピックでも経験していない「1つの会場に50万人超の来場者が来る事」を想定し、この当時から見た近未来の都市をイメージした計画を立案。チーフプロデューサーである丹下健三の基本構想のもと、イベントの中心となるテーマ館(太陽の塔)や劇場、美術館などを集めたシンボルゾーンを「木の幹」とし、動く歩道を「枝」に見立て内外のパビリオンを「花」に見立てています。

日本では高度成長期のイケイケなマインドだったと思いますが(笑)、万博の傾向として「見せる万博」から「考える万博」へとその性格を大きく変えています。公害や人口爆発、資源の枯渇など様々な地球上の問題が顕在化し、国単位ではなく地球上に住む一人一人が考えなければならない問題に直面したからなのでしょうね。大阪万博が採択したテーマである「人類の進歩と調和」は、人類の進歩を讃えるだけなく、科学技術の進歩がもたらすさまざまな負の側面にも目を向けようという趣旨は当時画期的でこの理念を表現すべく「お祭り広場」が構想され、その中心に岡本太郎による「太陽の塔」が作られ、テーマ展示が展開された訳です。 

 

デザイナーにとっては、万博開催という莫大な予算が投じられた事で、通常の仕事では経験できないようなスケールの大きな仕事に関わる事ができたことも見逃せません。

メインパビリオンである「日本館」・・上から見るとシンボルマークのようにデザインは、河野鷹思をはじめ、田中一光、高村英也、古畑多喜雄、粟津潔、中村真、田村倫昭らが展示計画を作成。横尾忠則がディレクションしたせんい館は、今で言うディコンストラクションのような外観で異彩を放っており、会場では若いデザイナーの競演の状態。 また木村恒久は「矛盾の壁」という題でフォトモンタージュを製作。当初は、原爆投下直後の広島・長崎の記録写真をもとに作品を創っていますが、開幕1カ月前に政府からクレーム(あまりに生々しく凄惨だったため)が出されたため急遽変更を余儀なくされています。この結果、悲惨な内容は目立たなくなりました。この章で思ったのは、若いデザイナーが遠慮せずにエネルギーをぶつけている感があって、この絶好の機会に自分のクリエイティビティーを遺憾なく発揮しよう・・そんな強い意思が作品全てから伝わってきます。前例の無い仕事だけに大変なのは間違いないのですが、その個の力に圧倒されます。

最終的には、大阪万博は半年の会期中に6,421万人が来場、大成功をおさめました訳ですが、この「大阪万博1970 デザインプロジェクト」では、大阪万博を成功に導いたデザインワークを振り返ることで、デザイナーにとって万博とは何だったのか考え、また個の力から集合知に向かうパワーを感じる事ができます。デザイナーの皆さんにお薦めの展覧会です。。

  • 会場 東京国立近代美術館 〒102-8322 東京都千代田区北の丸公園3-1
  • 電話:03-5777-8600(ハローダイヤル) 東京国立近代美術館 
  • 会期 2015年3月20日(金)~2015年5月17日(日) 
  • 料金 一般 430円 (220円) 大学生 130円 (70円) 
  • *( )内は20名以上の団体料金 *高校生以下および18歳未満、
  • 65歳以上、「MOMATパスポート」をお持ちの方、
  • 友の会・賛助会会員、キャンパスメンバーズ、
  • 障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。 
  • イベント開催中の休館日 月曜日(3月23日、30日、4月6日、5月4日は開館)
  • URL http://www.momat.go.jp/Honkan/expo70/index.html