バルセロナ滞在四日目後半は、市内に戻りエンカンツの蚤の市からアグバータワーを経てBarcelona Digital Centro Tecnológicoへ。バルセロナ現代建築巡りの前半編。
Text / Photo @Hirasawa Futoshi / FUJIFILM X-T10 + XF14 F2.8 & XF18 F2
エンカンツの蚤の市( Els ENCANTS BARCELONA )
ヨーロッパでも最も古い蚤の市の一つである、エンカンツの蚤の市。2013年に周辺の都市再開発に伴い、隣接地に移転し、リニュアールオープンしました。 泥棒市とも揶揄されるくらい多種多様なモノを取り扱う(笑)蚤の市としても有名で、地元の人でにぎわっています。
リニューアルオープンでの最大の目玉は、この巨大でシンボリックな「ミラー屋根」です。設計は地場の設計事務所「 Fermín Vázquez, b720 architecture studio」。この設計事務所は、バルセロナでは力のある組織設計事務所らしく、後述のデビッドチッパーフィールドがマスターデザインしたオフィスビル「Diagonal 197」やジャン・ヌーベルがマスターデザインした「アグバータワー」でもクレジットされています。ヨーロッパ全体で公募したコンペを勝ち抜いたプランニング&デザインですが、竣工間近に雨漏りが発覚し(笑)オープンが3ヶ月伸びています。たまにしか雨が振らないですから仕方ないのでしょうか(笑)
設計の意図としては、一つのシームレスなフロアー(都合3フロアーをスロープで繋げている)にする事で、回遊性を高め、来客者にストレスが掛からないように配慮されています。マーケットそのものは常設店舗(プレハブ・タイプの店舗)とフリーマーケットに分かれていて、棲み分けされています。このマーケットは四方からのビジビリティが良く、どの面から眺めてもボリュームが異なって見えます。
エントランス目の前の店舗ではCKの偽物パンツが5枚で10€で売られていたのが衝撃的でしたが(笑)、モダンで斬新な建築とは異なり、売っているものはかなり生々しく(雨漏りもモノともせず)相当な情熱を掛けて創られた建築(屋根)もここまで派手じゃないと売っているモノに負けちゃうなあと(笑)。商売する方も必死でしょうが、建築も必死にならざるを得ないですね。。
エンカンツの蚤の市( ENCANTS BARCELONA )
AV.Meridiana,73,08018 Barcelona
設計:Fermín Vázquez, b720 architecture studio
URL: http://www.encantsbcn.com/en-us/home.aspx
月・水・金・土 9:00~20:00
http://www.encantsbcn.com/ca-es/calendari.aspx
ディセニィ・ハブ・バルセロナ(Disseny hub barcelona)
エンカンツの蚤の市の真向かいにあるディセニィ・ハブ・バルセロナ(Disseny hub barcelona)は、デザイン関係のイベントや企画展などを行うスペースとして建てられたデザイン・ミュージアムで、設計は、地場の建築家集団のMBM ARQUITECTES、彼らの代表作です。元々は、ペドラルベス宮殿内にあった陶器博物館、装飾美術館、テキスタイル・装飾博物館が一つに纏まり2014年12月にこの地でオープンしました。
フロアー事にカテゴライズされており、1Fは主に地元に関連するデザインアイテムの常設&テンポラリーな空間になっており、僕らはこのフロアーだけ見学しました。
昨年末オープンし、このディセニィ・ハブ・バルセロナの完成によって、このエリアの再開発は一区切り(とは言っても、他所ではまだまだ建てていますが)した感があり、このエリアの散策するのも今回の旅行の楽しみの一つでした。蚤の市をみて、デザインミュージアムを見学し、疲れたらお茶休憩出来る場所もあるのでお薦めです。
ディセニィ・ハブ・バルセロナ(Disseny hub barcelona)
Pl. de les Glòries Catalanes 37
TEL 34 932 255 800。
設計:MBM ARQUITECTES
10時〜20時。月曜休。
入場料6ユーロ。公式サイト
アグバータワー(アグバールタワー)(Torre Agbar )
バルセロナの近代建築ではもっともシンボリックな「アグバータワー」は2005年に完成した、水道局の本社ビルです。高さは低く抑えられている(バルセロナは高度規定があり、高い建物が建てられない)ものの、夜はド派手なライトアップで良くも悪くもよく目立つタワーです。基本構想・設計は大御所、ジャン・ヌーベル。
モンセラットの山肌と(水道局の本社ビルという事から)噴水のオマージュとされる外観のデザインですが住民からの評判が芳しくない事が多いようで「街並に合っていない」「座薬みたい」と散々です(笑)。アントニ・ガウディが各所に建立した際も似たり寄ったりの散々な評価でしたから、それまで許容されて来なかった建築を建てる建築家は勇気が入ります。新しい事にチャレンジするのは、建築家も地元住民も双方大変です。
バルセロナは景観規制が厳しい街なので、この外観の色彩パターンも相当スタディして決めていったはずでジャン・ヌーベルの情熱を感じます。プログラミングで動くのはライトアップだけでなく、透明とタペガラスのルーバーが開口部の有無によって配置され、外気温によって自動的に日差しを遮る仕組みにもなっています。思っている以上に密度があり緻密なディティール。ちなみに中はオフィスのため入れません。
アジアの都市で見掛ける「タワー建築」に比べるとそれなりにヒューマンスケールが維持され、環境の余白が守られている事もあり(また建築のデザインとしても配慮が感じられる)なかなか良い建築だと思います。バルセロナの新しいシンボルとして建てた訳ですし、見れて良かったなと。
Construction year: 2005
Architect(s): Jean Nouvel Atelier | B720 Arquitectos Project
High Rise | Office
Website: www.torreagbar.com
Address: Avda. Diagonal 211, BARCELONA, Spain
Diagonal 197(Campus Audiovisual)
このエントリーでここまで見た建築の中では最も古い2008年に完成したオフィスビル Diagonal 197。設計はデビッド・チッパーフィールド。この建物は見学する予定に無かったのですが(笑)、たまたま通りが掛かったこの建物が、デビッド・チッパーフィールドがマスターデザインを手がけたバルセロナの裁判都市 (La Ciutat de la Justicia)と手法が似ている(外壁の仕上)事もあり、後で調べた所やはりデビッド・チッパーフィールドの設計だったというオチです。笑
均一ではない、斑感のある外壁色。全体的に低彩度で纏められていることもありますが、遠方から見ると色が混ざり合って見え、窓のランダム感が際立つ不思議な外観です。派手な外観を擁した近代建築が目立つバルセロナの街の中で大御所が手がけた建築としては地味に見えるかもしれませんが、非常に緻密なスタディが感じられ、感銘を受けました。
Diagonal 197(Campus Audiovisual)
Avinguda Diagonal 197, BARCELONA, Spain
Construction year: 2008
設計: David Chipperfield Architects | B720 Arquitectos Project
Barcelona 2015 Reported by Futoshi Hirasawa
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