バルセロナ二日目。バルセロナ現代美術館から徒歩でサンタカタリーナ市場まで。
二日目は、バルセロナ現代美術館からスタート。グエル邸、エル・バリ・ゴシック(ゴシック建築の街並)、サンタ・エウラリア大聖堂、サンタ・カタリーナ市場、カタルーニャ音楽堂などを中心に散策しました。今回のエントリーでは、その前半。バルセロナ現代美術館からサンタ・カタリーナ市場までの事を中心に書きます。
MACBA バルセロナ現代美術館
リチャード・マイヤーが設計、1995年に完成したバルセロナ近代美術館。歴史的な風致地区ラバルにあるモダンな美術館ですが、目の前の広場は冬期スケートリンクになるなど、路地が狭く薄暗いラバル地区に広いスペースと一筋の光をもたらせたともいえます。マイヤーがリスペクトする「白」を基調としたコンポジットなファサードに、恣意的な曲線が織りなし、バルセロナの空とのコントラストが絶妙にとけ込んでいます。
館内の展示は、常時展示と企画展示とが行われており、美術館のコレクションを展示する常展示は、5700点のコレクションから4~5ヶ月ごとに展示を変えています。残念ながらこの日は休館日。後日見学するとして、周辺の環境を見学しました。
美術館の外には、スペインの有名な現代彫刻家 Jorge Oteiza の作品「波」が常設。近くには1989年に、キースへリングが当時のラバルの公園の壁にエイズ撲滅活動のために描いた壁画が、この美術館の広場に再現されています。
さらには、美術館の向かいにある中世からの教会とその建物が、バルセロナ現代美術館の一部として、大きな作品の展示や、一部の作品の保管などに利用されています。美術館としての役割は、単に美術収蔵品の展示、啓蒙、管理に留まらず周辺環境との調和、アートに対する積極的な発信がありますが、このバルセロナ現代美術館は、非常によく纏まっていて、裏手に当たるバルセロナ現代文化センター(Centre De Cultura Contemporanea De Barcelona)との環境面の連携は見事でした。
MACBA (Museo de Arte Contemporáneo de Barcelona)
バルセロナ現代美術館
設計:リチャード・マイヤー
ADD : Plaça dels Àngels, 1 08001 Barcelona
Tel.: + 34 93 412 08 10
Fax.: + 34 93 412 46 02
URL: http://www.macba.cat/
月曜閉館
CCCB バルセロナ現代文化センター
バルセロナ現代文化センター(Centre De Cultura Contemporanea De Barcelona)は、1994年2月にオープン。建築、デザインなどバルセロナの20世紀の現代アートを代表する作品が常に展示されている地元の人たちの間で人気のアートスポットです。バルセロナ現代美術館と同じく月曜閉館(2015年8月現在)なので中は見学出来ませんでした。
CCCBは、約15,000平米の延べ床面積があり、1802年に創設されたバルセロナ慈善団体(Casa de la Caritat de Barcelona)の建物をリノベーションしています。設計したのは、エリオ・ピニョン&アルベルト・ビアプラーナ。U字型の配置、北側の地上30メートルの全面ガラス張りの建物でへムンタレグレ通りからは、中に踏み込まないと中が窺い知れない造りになっています。
CCCB バルセロナ現代文化センター
設計:エリオ・ピニョン&アルベルト・ビアプラーナ
ADD: Montalegre 5 Plaza Catalunya (L1, L3)
TEL: 93-306-4100
URL:www.cccb.org
営業時間:11時から20時まで
月曜閉館
入場料:大人4.4ユーロ 16歳以下は無料
ランブラス通り(La Rambla)・サン・ジュセップ市場 (Mercado de Sant Josep)
ランブラス通り(La Rambla)はバルセロナを代表するメインストリートで、旧市街地に位置し、市の中心部から臨海地区まで続く長さ1.2kmの並木道です。沿道には、サン・ジュゼップ市場(Mercat de Sant Josep)や少し入った所にグエル邸があります。 このランブラス通りは、バルセロナきっての繁華街であるのと同時にスリの名所(前回、個人で行った時はポケットに入れていたダミー財布が見事にすられました。苦笑)でもあるのですが、今回はスリ対策を施していったので幸い被害には遭わずにすみました。最近はiPhoneスリなる、スマートフォンを狙ったスリがヨーロッパの各地で多発しているらしいので、行かれる方は対策が必要ですよ。
Mercado de Sant Josep (サン・ジュセップ市場(ボケリア))
ADD:La Rambla 85 -89
TEL:(34) 93 318 2017
開店時間:8:00~20:30
定休日:日曜
ゴシック地区 Gothic Quarter (Barri Gotic)
ゴシック地区は、ランブラス通りの東側に位置する、ゴシック建築の街並が林立する旧市街エリアにあります。ゴシック様式で建てられた建築物が中心なのでこの名がついている訳ですが、中世からの建物も多く、サグラダ・ファミリアやカタルーニャ音楽堂などの所謂モデルニズモ様式よりも前の時代の様式感ですから、バルセロナの人からするとちょっと古くさい感じに映るのかもしれません。
路地そのものはとても狭く、迷路のように入り組んでいるので、油断すると迷います(笑)。歴史がある街だけに、スペイン内戦時の傷跡も残しており、時代性を感じる事ができます。また狭い路地故に薄暗く、夏の日差しが強く日中暑いバルセロナでは、日陰の中で散策出来るのはここぐらいではないでしょうか。
サンタ・エウラリア大聖堂 La Catedral de la Santa Creu i Santa Eulàlia
サンタ・エウラリア大聖堂 (La Catedral de la Santa Creu i Santa Eulàlia)は、ゴシック地区の中心にあるカトリック教会の教会で、13世紀から15世紀にかけゴシック様式で建てられています。バルセロナ市民からは単にラ・セウ(La Seu)と呼ばれており、バルセロナ大司教座が置かれています。入場は無料(2015年8月現在)ですが、帽子は被らず手で持つ、肌の露出が多い洋服を着ている場合はストールなどで肌を隠すなど、一定のドレスコードがあります。
サンタ・エウラリア門から入場して、中庭のコリドーを眺めながら本堂内部へ進みます。中には13歳で殉教した聖エウラリアにちなみ13羽の白いガンが飼われており、ユニークです。コリドーに配置された噴水もディティールが素晴らしく、思わず見入ってしまいました。
本堂内部は、他のゴシック様式で建てられた教会建築と違わず壮厳です。現在はLEDでライトアップされているので、見ての通りですが創建当初は薄暗く(ロウソクなどあったにせよ、窓のある最上部を除けば)ここまで見えなかったのでしょうね。神聖な雰囲気と外の喧噪。このギャップも良いのですが、バルセロナの代名詞であるモデルニズモ建築と比較する上でも、見ておきたい聖堂です。
サンタ・エウラリア大聖堂
ADD:Pla del la Seu, 08002 Barcelona
開館時間:8:00~19:30
入館料:平日 8:00~12:45、17:15~19:30:無料/13:00~17:00:寄付制
日曜祝日 8:00~13:45、17:15~19:30:無料/14:00~17:00:寄付制
休館日:無休
URL:http://www.catedralbcn.org/index.php?lang=en(英語版)
サンタ・カタリーナ市場 Mercado Santa Catarina
旧市街にあるサンタ・カタリーナ市場は、個人的に二度目のバルセロナで特に見たかった建築の一つであり、「建築と食」をシームレスに具現化している数少ない施設です。a+uのスペイン特集でも表紙を飾った、リノベーション後の恣意的で情熱的な屋根形状のおかげで一際目立っています(笑)。 設計を担当したのはエンリック・ミラーレス、ベネデッタ・タリアブーエ共同主宰のバルセロナの設計事務所EMBT。
改修前の旧市場は、かつてのサンタ・カタリーナ修道院の跡地に1848年にオープンし当時バルセロナで唯一の屋根付きの市場でした。この改修(1997-2005年)ではトレードマークの「新しい屋根」が架けられ、旧市場の名残は屋根から下のファサード面や入り口にのみ見ることができます。この改修そのものはバルセロナ市が主導し、新しいランドマークとしての期待も込めた事から、このような挑戦的なリノベーションになったようです。実際、大抵のガイドブックには掲載されているサン・ジュセップ市場(前出)や他の市場だけでは、観光客を賄いきれないと思いますし、保守的なゴシック地区にこのような市場を蘇生させる事には意味がありますからね。
この特徴的な屋根は、主軸を鉄骨、補助フレーム以降は木製(恐らくパイン材)で、外部屋根に六角形のテラコッタタイル敷き詰める方法で施工されており、日本では雨仕舞いが怖くてなかなか出来ない事にチャレンジしています。屋上面のユニークなタイルパターンは上から見ないと見えませんが、こんな感じです。ちなみにこのパターンは、野菜やフルーツをイメージしています。設計開始が1997年、竣工が2005年でその期間は約8年!。その間、市場は閉鎖される訳ですから関係者は相当な忍耐が必要ですし。エンジニアリング的にもかなり野心的ですから、これだけ時間もかかったのでしょう。
派手な形状ですが、ストラクチャブルな内観は新設した鉄骨をベースにしながらも既存のコンクリートフレームも利用しており、無理が無く破綻していません。スペインのローカル・アーキテクト(地場で活躍している建築家)の底力を見せつけた作品とも言えます。実際彼らはこの作品で、世界中からオファーが殺到する事になった訳ですからね。ちなみに上海万博のスペイン館は彼らの手に寄ります。比較すると解りますが、彼らのお作法(コンテキスト)を、このサンタ・カタリーナ市場とスペイン館で感じるはずです。
丁度この市場に着いたのが昼食どきだったので、市場に併設されているバルに直行し、ビールとタパスを堪能しました(この時の食に関しては後で詳しく)。このバルとレストランは市場直営で、市場の食材を料理して振る舞うコンセプト。古今東西どこでもそうですが、新鮮なものをそのまま食べたいのは変わらない訳です。この二つの店舗は隣り合わせに併設されていて、レストランの方は午後からの営業とのことでした。 インテリアに関しても、市場のストラクチャーがそのまま生かされていて、明るく開放的。華美な装飾は皆無ですが、市場のバル&レストランですし、好感が持てます。強いて難点を言うのであれば、この市場にはトイレがありません(泣)。近くの店のトイレを借りているそう(笑)
市場の中は、場内市場的な展開になっていて、構造的には大屋根とファサード壁面と屋台がセパレートになっています。全般的に価格も安く、プロシュートなどの試食なんかもできます。午後の早い時間だったので客足は多くありませんでしたが、屋台の見せ方には賑わい感やシズル感があり、思わず立ち寄ってしまいます。基本的には日本と一緒で、魚屋、肉屋、チーズ屋、果物屋、八百屋、オリーブ関連食品など専門化されているのでわかり易いです。
このサンタ・カタリーナ市場を設計したミラーレスは、この市場の完成を見る事無く、2000年に45歳という若さで他界しています。その意思を継いだパートナーのベネデッタ・タリアブーエ(彼女はプライベートでもパートナーで奥さん)とスタッフが彼の意思を継ぎ、2005年に完成させています。この市場は、彼の出世作の一つであり、今後の活躍が期待されていたスペイン建築界の一人でしたから関係者の悲しみは大きかった事でしょう。ガウディ然り、ピカソ然り。スペインのアーティストは、志半ばで逝去してしまう事が多いのは、彼らの情熱が大き過ぎるからなのでしょうかね。。
サンタ・カタリーナ市場 Mercat de Santa Caterina
設計:エンリック・ミラーレス(Enric Miralles)、ベネデッタ・タリアブーエ(EMBT)
ADD : Av. Francesc Cambó, 16
TEL : 933 195 740
URL:http://www.mercatsantacaterina.net/
Barcelona 2015 Reported by Futoshi Hirasawa
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